2020/02/13

「甘いもの」が競技パフォーマンスを落とす理由3つ

こんなツイートが大量いいね集めてるのを見た:
❝ 長距離選手がお菓子やジュースなどから糖分を取り過ぎていると、筋肉が硬くなり100%のパフォーマンスが出せなくなります。
練習を積んでいるとどうしても糖分が欲しくなると思いますが、糖分の多いものはできるだけ我慢するようにしましょう。❞
ツイッターではちょっと変わった話がウケるものだけど、「筋肉が硬くなる」という根拠のない情報に疑問を持たない人ちょっと多いかな? このブログでは、もう少し正確な説明をしておきます。



1.健康の基本

はじめに大前提の確認から。「糖分」といえばまず「質」を見るのが令和の常識。超ざっくり2分すると、
  • 未精製穀類・芋・果物などなどの自然食品
  • そこから加工された砂糖的なの
に分かれる。

同じ林檎🍎🍎🍎であっても、そのまま食べればほぼ身体に良く、糖尿リスクも低い。100%ジュースと称して繊維分を除外して売ってるのは糖尿リスク上がる。以下、テーマを後者の人工的糖質に絞って書く。

砂糖的なやつの(スポーツ以前に)健康全体についての問題は、
  • 急激な血糖値変動 → 糖尿病
  • AGE(終末糖化産物)増加 → 老化
などある。
「AGE」とは年齢のAgeとかけたダジャレ込みな略語、最近いわれるようになった。皮膚のしみ・しわ・たるみ、血管の動脈硬化、骨の骨粗しょう症、目の白内障などのリスクを高める。不妊・認知症・がんとの関係も報告されている。(西日本新聞2019/9/4 "老化の原因「糖化」とは?専門家に聞く仕組みと対策" より)

2.スポーツへの悪影響3つ

競技パフォーマンスに問題を絞ると
  1. 砂糖系は「Empty Calory」=他の栄養素が乏しいため、全体に、栄養欠乏に陥りやすい
  2. 血糖値急上昇でインスリンが分泌されると、運動時のエネルギー源が糖質に偏り、脂肪活用度が下がる
  3. 就寝時に高血糖になると、成長ホルモン分泌が阻害される
ではないだろうか。

1は、栄養豊富な食べ物のシェアが下がるだけでなく、筋肉を動かすために必要なミネラルを(マグネシウム・カリウム・カルシウムなど)余計に消費してしまう。("1分子の糖の代謝に28分子以上のマグネシウムが必要" との情報あり)

2もたまに書いてきた話で、特に糖質だけでは不足する90分以上の運動では重要。
運動開始前に食べるならギリギリ15分以内、できれば開始30分後以降、あたりが目安かな。いわゆる「スポーツドリンク」は60分以内の運動なら必要度0%。

3.の成長ホルモンは、疲労回復や脂肪燃焼に効果があり(だからNIKEのサラザールは長距離ランナーに試そうとした)、しかも加齢で減少する。30後半くらいから放っておくとパフォーマンス低下することの大きな原因となる。

その対策として、「低血糖のストレスを利用する」という方法が、最近注目されている。

2−2. 成長ホルモン増加のために

簡単な方法は、病院に行って、注射してもらう。※ドーピング違反が関係ない場合

オーガニックな方法としては、睡眠時の分泌のために、
  • 夕食を早めに
  • 遅くなるなら、糖質控えめに
  • 高血糖が続いてたら、夕食後に運動
などが有効だ。

ストレスやドーパミンも促進要因なので、トレーニングで気分上げて(ドーパミン)、負荷(ストレス)をかけるのはプラス側。
夕食のデザートで砂糖系のものを食べるのはマイナス側。食べるなと言ってるのではなく、後に運動すればOK!

1月に書いたブログ ↓
トレーニング直後には 補 給 し な い 〜 世界最新、長距離競技の栄養のヒント6つ
もその手法に沿っていて、トレーニング直後にすぐに補給すること(=昔の常識)をせずに、低血糖状態を維持することで、成長ホルモン分泌を促す。

3.糖化とスポーツの関係

先に書いたAGE(終末糖化産物)の増加は、動脈硬化の一因。筋肉・腱・筋膜などを劣化させることも考えられる。
ただ、AGEがこのレベルまで悪さをする状況とは、体全体がかなり不健康な状況であることが容易に想像されるのではないかな?
スポーツして、シェイプできる限りは、この心配はいらないのではないかと思う。(情報あるかた教えてください)


ついでに「ネット・リテラシー」について

まあ、結論として「甘いものを控えよう!」と行動を変えられるのなら、その理由付けがどうであれ、価値のある情報発信ととらえることもできるかもだ。なので僕にとって、へーこういうのウケるんだー、という学びにこそなれ、そのTwitterアカウントさんを批判する気はありません。

ただ、それでいいの? と思うだけ。このツイート主さんは、陸上の記録を書いているけど、本当に出してるのか素性が一切わからない。仮に出していただとして、発信が信頼に値するかは別の話だ。「もっともらしいナリをした人の言うことをそんな素直に聞いてていんですか?」という気持ちになる。

ではなぜ、「一見科学ぽくて、実はそうではないツイート」がウケるのか?と考えると、
  • 「あたりまえな話」がベースなので共感しやすい
  • 「小さなサプライズある情報」をトッピングして刺激もある(ピザにかけたタバスコ的なやつ)
  • 5000m14分台出してますとだけ自己紹介していて(※素性一切不明だし本当に出しているのかは全くわからない)、なんとなく信頼したくなる
  • 単純なフレーズを繰り返して、わかりやすい(セクシーな人気政治家さん的な)
といった理由だろうか。

リテラシー=文章読解力の問題。

情報過多な時代には、対応はざっくり2つあり、
  1. シンプルにわかりやすい結論だけ言い切ってくれる情報だけみているか
  2. 自分の頭で考えて、見分けるか
僕はタイプ2に向けて書いているつもりだけど、タイプ1のほうが楽に生きれるってこともあるかもしれないね。ご判断はお任せします。万人にとっての絶対解はないから。




2020/01/11

トレーニング直後には 補 給 し な い 〜 世界最新、長距離競技の栄養のヒント6つ


トレーニングは、負荷→栄養→休養、の3種目を完走してはじめてゴール。真ん中の栄養は原材料であり燃料。その長距離アスリートに向けた最新見解をデイブ・スコットが2020/01/01あけおめYoutubeで説明している。


全体にプチ断食と(良質な)脂質重視という最近の流行りに沿っている中、新情報は、「トレーニング直後には補給するな」という点だ。成長ホルモン分泌を目的とする手法で、過去常識である「30分以内はゴールデンタイム」論の逆転になる。



数分間の動画で、"日常生活で差をつける栄養とトレーニングのヒント"がタイトル、「新年だし試してみれば?」程度のヒント集。結論と短い説明だけで。真の根拠はDave Scottの名前です!といったところだけど、実際それだけでもかなり強い。
要点:
  1. 甘い飲物NG
  2. 精製油(サラダ油とか?)を、アボカドやココナッツなどの良質な(高価な!)油に
  3. 朝食を遅く=12−15時間のプチ断食へ
  4. 間食しない、食事後3−4時間は空ける、どうしても空腹ならナッツなどを少しだけ
  5. トレーニングは全身連動する運動で終えて、終了後すぐには補給するな
  6. 1杯の辛口ワインやダークチョコレートを楽しむ
このうち、1,2,6は長距離トレーニングに限らず、美容系も含めた流行の食事メソッド、説明不要だろう。6.は抗酸化も兼ねた楽しみ、ということだろうけど、ワイン、1杯だけとはむしろ高難度な…😅

プチ断食

3,4は、間欠的ファスティング、プチ断食などのメソッドと共通する。

3.朝食時間は、12時間の断食の場合、夜8時に夕食を終えて朝食は早めに出社してからオフィスで8時開始でOK。田舎とかではわりと普通な生活かと思い、僕も実家は夜7時/朝7時な感じ。
あるいは、夜9時食べ終わり/昼12時=朝食抜き。育ち盛りの子供だとダメなやつで(そもそも高校生の競技は長くてもラン10km、糖質だけで済む)、Daveは大人向けのアドバイスなので。長距離慣れして脂質代謝力が上がっていればけっこういけると思う。僕もエネルギー過剰気味な場合にそうすることが多い。

※動画では触れてないけど、朝食前やや軽めトレーニングも、その効果があるはず。

間食禁止とプロテイン補給法

4.間食禁止は、満腹ホルモン「レプチン」と空腹ホルモン「グレリン」の最適化により、成長ホルモン系を最大利用することが目的。

この対象者は、プロテインをこまめに摂っている人。考え直していいかもしれない。
似たことを言っていたのが、去年秋に来日した自転車選手アダム・ハンセン。プロテイン摂取について
「プロテインは、トレーニング直後に集中配分して摂れ、小分けし過ぎるな」
と言っていた。これは僕も直感的にそんな気がする(僕の場合はプロテインではなく自然食品だけど)。ボディ・ビルダーとかならこまめに摂ることで吸収量の上限を攻める必要もあるのだろうけど、長距離は別の競技。
 

トレーニング直後には補給しないほうがいい

注目は5.つめだ。よくジムとかにプロテイン入りボトルなど持ち込み、終了直後に飲んでいる人がいる。そうするな、という常識逆転になる。

目的は、ヒト成長ホルモン、テストステロン、などの超回復ホルモンを分泌させること。

まずトレーニングでは、全身の筋肉を連動させる動作で締める。たとえば正しいスクワットがそうらしい。スイムだと壁をけらない25mダッシュとかどうだろう?

その上で、
「すぐには栄養補給しない」
すぐって何分だ?て思ってしまうアナタは、もしかしたら、平成までの旧常識に毒されているかもしれない。笑
去年書いたブログ ↓
"タンパク補給の新常識を知っているか? -『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』 (庵野拓将, 2019)書評" 
を今一度お読みを
  • 昔: トレーニング後30分以内の「ゴールデンタイム」にタンパク質を摂れ
  • 最新: トレーニング後1〜3時間ほどが筋タンパク質の合成速度が最も高く、少なくとも24時間は有効 
この考えからは、そもそも時計を見て判断する必要がない、となる。

トレーニング直後の出し尽くした感覚の中で、
「ホルモン出てるぞ! これがホルモンだ!」
と、しばし味わえばいい。

この手法の背景には、近年、ホルモンについての科学的知見がいろいろ明らかになっていることがあるだろう。その中でも、空腹というトリガーが体内で重要な働きをしているのだろう。「腹八分目に医者いらず」の理論的証明というか、後付けな。

スポーツ科学とは、このようにひっくり返ることが結構ある。その程度のものだから教科書どおり忠実に実行する意味はあまりなくて、参考程度にすればいい。それが昔からの僕の考え方です。わかっていることは活用する、自分の感覚を磨くために。

平成までの旧常識をアップデートしよう。

  

プロテイン使用の必要性を感じない僕としては、ナッツ小袋わけ+豆乳ミニパック、の組み合わせが、外出先で便利だと思っている。