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2020/01/11

トレーニング直後には 補 給 し な い 〜 世界最新、長距離競技の栄養のヒント6つ


トレーニングは、負荷→栄養→休養、の3種目を完走してはじめてゴール。真ん中の栄養は原材料であり燃料。その長距離アスリートに向けた最新見解をデイブ・スコットが2020/01/01あけおめYoutubeで説明している。


全体にプチ断食と(良質な)脂質重視という最近の流行りに沿っている中、新情報は、「トレーニング直後には補給するな」という点だ。成長ホルモン分泌を目的とする手法で、過去常識である「30分以内はゴールデンタイム」論の逆転になる。



数分間の動画で、"日常生活で差をつける栄養とトレーニングのヒント"がタイトル、「新年だし試してみれば?」程度のヒント集。結論と短い説明だけで。真の根拠はDave Scottの名前です!といったところだけど、実際それだけでもかなり強い。
要点:
  1. 甘い飲物NG
  2. 精製油(サラダ油とか?)を、アボカドやココナッツなどの良質な(高価な!)油に
  3. 朝食を遅く=12−15時間のプチ断食へ
  4. 間食しない、食事後3−4時間は空ける、どうしても空腹ならナッツなどを少しだけ
  5. トレーニングは全身連動する運動で終えて、終了後すぐには補給するな
  6. 1杯の辛口ワインやダークチョコレートを楽しむ
このうち、1,2,6は長距離トレーニングに限らず、美容系も含めた流行の食事メソッド、説明不要だろう。6.は抗酸化も兼ねた楽しみ、ということだろうけど、ワイン、1杯だけとはむしろ高難度な…😅

プチ断食

3,4は、間欠的ファスティング、プチ断食などのメソッドと共通する。

3.朝食時間は、12時間の断食の場合、夜8時に夕食を終えて朝食は早めに出社してからオフィスで8時開始でOK。田舎とかではわりと普通な生活かと思い、僕も実家は夜7時/朝7時な感じ。
あるいは、夜9時食べ終わり/昼12時=朝食抜き。育ち盛りの子供だとダメなやつで(そもそも高校生の競技は長くてもラン10km、糖質だけで済む)、Daveは大人向けのアドバイスなので。長距離慣れして脂質代謝力が上がっていればけっこういけると思う。僕もエネルギー過剰気味な場合にそうすることが多い。

※動画では触れてないけど、朝食前やや軽めトレーニングも、その効果があるはず。

間食禁止とプロテイン補給法

4.間食禁止は、満腹ホルモン「レプチン」と空腹ホルモン「グレリン」の最適化により、成長ホルモン系を最大利用することが目的。

この対象者は、プロテインをこまめに摂っている人。考え直していいかもしれない。
似たことを言っていたのが、去年秋に来日した自転車選手アダム・ハンセン。プロテイン摂取について
「プロテインは、トレーニング直後に集中配分して摂れ、小分けし過ぎるな」
と言っていた。これは僕も直感的にそんな気がする(僕の場合はプロテインではなく自然食品だけど)。ボディ・ビルダーとかならこまめに摂ることで吸収量の上限を攻める必要もあるのだろうけど、長距離は別の競技。
 

トレーニング直後には補給しないほうがいい

注目は5.つめだ。よくジムとかにプロテイン入りボトルなど持ち込み、終了直後に飲んでいる人がいる。そうするな、という常識逆転になる。

目的は、ヒト成長ホルモン、テストステロン、などの超回復ホルモンを分泌させること。

まずトレーニングでは、全身の筋肉を連動させる動作で締める。たとえば正しいスクワットがそうらしい。スイムだと壁をけらない25mダッシュとかどうだろう?

その上で、
「すぐには栄養補給しない」
すぐって何分だ?て思ってしまうアナタは、もしかしたら、平成までの旧常識に毒されているかもしれない。笑
去年書いたブログ ↓
"タンパク補給の新常識を知っているか? -『科学的に正しい筋トレ 最強の教科書』 (庵野拓将, 2019)書評" 
を今一度お読みを
  • 昔: トレーニング後30分以内の「ゴールデンタイム」にタンパク質を摂れ
  • 最新: トレーニング後1〜3時間ほどが筋タンパク質の合成速度が最も高く、少なくとも24時間は有効 
この考えからは、そもそも時計を見て判断する必要がない、となる。

トレーニング直後の出し尽くした感覚の中で、
「ホルモン出てるぞ! これがホルモンだ!」
と、しばし味わえばいい。

この手法の背景には、近年、ホルモンについての科学的知見がいろいろ明らかになっていることがあるだろう。その中でも、空腹というトリガーが体内で重要な働きをしているのだろう。「腹八分目に医者いらず」の理論的証明というか、後付けな。

スポーツ科学とは、このようにひっくり返ることが結構ある。その程度のものだから教科書どおり忠実に実行する意味はあまりなくて、参考程度にすればいい。それが昔からの僕の考え方です。わかっていることは活用する、自分の感覚を磨くために。

平成までの旧常識をアップデートしよう。

  

プロテイン使用の必要性を感じない僕としては、ナッツ小袋わけ+豆乳ミニパック、の組み合わせが、外出先で便利だと思っている。

2019/07/07

「失敗情報」こそ知るべきである ー 白人最速ライアン・ホール&カノーヴァ先生の事例

成功と失敗は一体

成功と失敗はセット。
失敗の中から、成功は生まれるから。

そして人体という有限リソースを使うのがスポーツ。
「成功するやり方を、やり過ぎて、失敗する」という事がよく起きる。
己の能力の限界を極めるとは、そんな成功と失敗の境目を見極めるということだ。

それはクラッシュしない限界速度でコーナーに入るようなもの。成功シナリオは実現しなくても「残念でした」で済むけど、失敗シナリオの方は、起きた時に、取り返しのつかないダメージになることもある。

でも成功事例は世に出やすく、失敗ほど出てこないもの。成功者にとって、成功事例を語るor ドヤる のはそれ自体がある種の心理的報酬になる。それをパターン化すれば、華やかで夢のある話になる。みんながHAPPYになれる。

でも成功のしかたは人それぞれ。その人の遺伝子、性格、環境、目標、等々が複雑に作用するものだ。さ核心部分ほど言語化が難しい。隠している(こともあるだろうけど)のではなく、伝えたくとも言葉で伝えられないから。

むしろ失敗事例をパターン化した方が、現実に使える情報になると思う。
知っていれば避けられることも多い。

だから、失敗事例は希少となり、貴重となる。バランスとしても、より価値があるのは失敗事例の方だと思う。
僕もこれまで失敗ケースについての発信をしてきたけど、自分が気になったことが情報不足で、しかたなく調べてみたらこれまで日本語になっていなかった、ということが割とある。書きながら気が重たいことも多かったけど、結果としては感謝をいただくことが圧倒的に多い。

今回取り上げるのは、マラソン2時間4分台というアメリカ白人ランナーとして当時の最速記録を出したライアン・ホール選手の失敗を取り上げる。テーマは「休養・リカバリー」の重要性についてだ。


ランニング指導の「成功例」レナート・カノーバ

レナート・カノーバ(Renato Canova)は、中長距離走のコーチとして、オリンピック等のメダル獲得48個。NHK「奇跡のレッスン走れ!苦しみの向こうへ 陸上 長距離」(2019.02)でも登場している。
僕も

など、これまで「成功例」として何度か紹介してきた。

その指導法は、ケニア拠点のプロ・ランナー池上秀志さんブログ「レナト・カノーヴァから学ぶマラソントレーニング」(2019.02) が最新、かつ信頼性も高い。

要点まとめると、トレーニング手法の特徴として「特異性」「リカバリー」「高強度な練習の量」「変化走」の4つが挙げられている。
僕思うに(というか明らかに)、最も特徴的なのは「特異性」=マラソンの競技内容に近いもの=距離はハーフマラソン以上、ペースはマラソンレースの90%以上=という練習の重視だ。

その結末についても池上さんは正直に、「練習でここまでやってしまうと、レースで結果を出せなくなる選手の方が多いのも事実です。」と書かれている。

この成功と失敗とを分けるのは、2つめの要素「リカバリー」だ。練習がキツいから、休養を増やす。方法論としては極めて合理的。「ジョギングはトレーニングにならないのにリカバリーを遅らせる、だったら家で寝ている方がまし」なんて言葉もある。これ僕も同感。

Photo by Alexander Possingham on Unsplash

カノーバ指導の「失敗例?」ライアン・ホール

そんなカノーバの指導のもとで競技引退につながる失敗をしたのが、アメリカ白人最速ランナー、ライアン・ホール選手。2011年ボストンマラソン2時間4分58秒(非公認)、公認記録では2008年ロンドン2時間6分17秒。北米公認記録はモロッコからアメリカに帰化したアーリド・ハヌーシ2時間5分38秒(2002 ロンドン)だけど、素直な感情としては、アメリカ人最速、と言ってしまっていいだろう。ハーフマラソンも59分43秒と速い。ボストンは下りが多くて非公認だけど、公認のロンドンやベルリンだって下り基調だし、白人として4分台を出した実績は歴史に残る。

ホール選手は2010年までランニングクラブで練習していたが、その後、単独練習に切り替えて、翌年のボストンを迎える。この時に練習内容を相談していたリモートのコーチが、トライアスロン指導者のマット・ディクソン (Matt Dixon)。僕も何度か紹介してきた、徹底したリカバリーを強調するコーチだ。

惜しむらくは、ホールは休む、ということが嫌いだった。休養をカットして追い込むようになっていき、2012年のロンドン五輪は途中棄権。
それを自分の弱さと見て、カノーバコーチの指導を仰ぐ。単独練習のスタイルを保ち、別の街に住みながら情報だけやりとりしていたので、疲労状況=実際に走っている状況、動き、表情、等々までは伝わらない。コーチからリモートで練習内容の指示が来て、ホール選手はこのうちアクセル部分を受け取り、ブレーキ指示を軽視してしまった。

その結果、オーバートレーニング状態を慢性化させる。次の完走は2014年ボストンマラソン、タイムを9分落としている。「走り始めて15分で電池が切れたように足が止まってしまう」という状況になり、2016年に33歳で引退する。


成功と失敗を分けるもの

ここで失敗したのは、カノーバの方法論ではなく、ホールの「実行のしかた」。
同様のケースは、世の「成功事例」とされるものの周辺に、多数あるはずだ。

ライアン・ホールは人並みはずれて頑張れる人で、その努力を武器に、フレッシュな28歳頃までは伸び続けていた。
でもその武器は諸刃で、同時に最大の弱点ともなってしまう。休養すると不安になってしまい、頑張る。ダメージの蓄積が、30手前で急ブレーキをかけることになった。

その状況に客観的に気付くことなしに、さらなる「アクセル」を求めて、世界最速コーチによる、世界的にも最もシビアなアクセルを踏みはじめしまったわけだ。

この時、ホール選手に必要だったのは「自分自身を客観視する」こと。
でもそれは1人では難しいもの。
現実的には「失敗事例の知識」だったと思う。

実際、休養コーチのマット・ディクソンは、自身がプロ・トライアスリートであった90年代の現役時代に、休養不足のために伸びなかった、という失敗経験を持っていて、その失敗を昇華させてコーチとして成功している。ただ、世界最高を目指していたホールには、ものたりなかったのだろう。

「実行方法」まで極めるためには、現地で一緒にトレーニングすることで対応できる。その後、白人最速となったノルウェーのモーエン選手は、ケニアで生活までともにして、カノーバ流で成果を挙げている。
過去記事: マラソン欧州記録更新、ソンドレ・モーエン選手(とカノーバ コーチ)トレーニング説明は金言の宝庫! (2017.02)
ただ普通、ケニア生活できないわけで、現実的にできることは、「その成功事例に基づいた失敗事例」を知っておくことだ。


情報の限界

このような状況は、あらゆる分野で、多数あるわけだ。

さらに「成功事例は世に出やすく、失敗ほど出てこない」という冒頭に書いた仕組みにより、より強化されてしまう。

経験豊富な指導者がその場にいて、一緒に活動できているのであれば、この境界の問題は解決できる。見ればわかるだろう。結果として伝わればよく、言葉にすることの重要度は低い。

問題は、セルフコーチのような、抽象化された情報を第一のよりどころとする場合に、成功例のアクセルワークだけが伝わりがちな状況だ。

つまり、文字情報で「成功例」を伝えようとする時、「失敗例」はより強く意識して伝えなければ、相手を失敗へと導きかねないというリスクがある。

だから紙でもネットでも、言葉で伝える場面ほど、マイナスにこそアンテナを向けて、踏み込んでいくことが重要になってゆく。


参考書籍

ホール選手のエピソードは、『Good to Go 最新科学が解き明かす、リカバリーの真実』(2019.03, クリスティー・アシュワンデン)より。Amazon書評の平均は低いけど、5点と1点に割れているからで、この手の極端に割れる本は(5点がサクラでない場合は)面白いことが多い。


Matt Dixonコーチの方法論に興味ある方、最新刊 ↓
"Fast-Track Triathlete: Balancing a Big Life with Big Performance in Long-Course Triathlon"  (2018.01)は、英語だけどKindleとGoogle翻訳でどうぞ。(僕は未読です)

僕自身のトレーニングとリカバリーについての思考と身体感覚については、自著『覚醒せよ、わが身体。 トライアスリートのエスノグラフィー』(2017.09)に詳しく書いておきました。

(Amazonのは定価新品以外は買わないでね)

あとホールがカノーバに師事しようというタイミングでの英語記事がこちら:RunnersWorld2012.12記事

2019/06/22

長距離スポーツの心房細動リスク

" スポーツは身体に良い " とは、だいたい正しいけど、
  • 関節や腱への物理レベルの負荷
  • 細胞への生化学レベルの酸化ストレス
などなど副産物にも対応してゆくことになる。
その先にある1つが、「スポーツ誘発型の心房細動」というリスクだ。

この最新科学をまとめたレビュー論文、「アスリートの心房細動の仕組み:わかっていること、わかっていないこと」※英語です="Mechanisms of atrial fibrillation in athletes: what we know and what we do not know" がバルセロナ大学の先生方により書かれ、2018年2月、オランダ心臓学会の学会誌に掲載されている。

レビュー論文とは、学界で評価の高い重要論文を、権威ある先生が整理したもの。まあ、権威なくても書くことは出来るんだけど、レビューという行為自体が上から目線なので、大学教授と名の付く人たちが尊敬するような大先生でないと受け入れられがたい、という実態もあるようだ。その結果、専門家向けのミニ教科書のようになるので、状況把握に便利。

その論文によると、スポーツ性の「心房細動」を発症するリスクが最も高いのは
  • 激しい持久系トレーニングを
  • 10年以上継続する
  • 一見健康な中年男性
おそらく普通の同世代と比べて見るからに元気で、社会的にも大事な役割を担う方が多いことだろう。あなたのような人かもしれない。

しかし残念なことに、どれくらいなら安全、といった基準を示せるだけのデータは世界的に存在しない。わかっていること/わかっていないことを整理すると、「発生確率が高い」という事実はデータで示されているが、「発生のメカニズム」は仮説にとどまり、どうすればいいのか?という「基準値」のようなものは存在しない。

発生メカニズムについての仮説とは、
  • 激しい運動による心筋負荷
  • 心筋の炎症
  • 心筋の酸化ストレス
などを原因に、心筋の線維化、神経伝達回路の障害などの症状が進行してゆく、ということ。これらの原因は、これまでも強調されてきた基本的なことに留まる。

単なる教養であればこれくらい知ってれば十分なんだけど、実際プレイヤーの立場からすれば、正直、どうすればいいのかわからない。しかも権威ある論文で説明されたとなれば。。

そんな中で、自分自身のn=1での方針を決めるためには、わかっていることを根拠に、考え方を明らかにしながら、自分なりの仮説を立ててゆくほかない。

その結論を先に書いておくと、
  1. 心臓も(筋肉同様に)リカバリーさせる
  2. 抗酸化できる食事・睡眠
  3. ピーク期間のコントロール(長短のオフの活用)
など、これまで書いてきた通りの基本に行き着くかなと思った。

大事なことを追記しておくと、
「激しい運動は健康に悪い」といったことが言われるけど、ここで説明することは、そうではない。激しい=高い心拍数が悪い、というわけではない。

そして、心臓のリスクはあるにせよ、運動による健康向上効果はトータル&平均では、より大きなものだ。

ここまでは概説。以下、少し詳しく説明していこう。
大きな構成は、
・知識まとめ: 心房細動、スポーツ誘発型の心房細動
・2つの意見: デイブ・スコット、GCNの専門医インタビュー
・考察: 疲労&リカバリー、期間
・結論
と計5,000字くらい、お時間ある時にゆっくりお読みください。


「心房細動」を理解しよう

はじめに大事なことを確認しておくと、心房細動は即死んでしまう病気じゃあない。

「心房」とは心臓上部の、脈拍を調整するためのサブエンジンのようなもの。神経からの電気信号が集まる箇所でもあり、電気信号が暴走して、毎分400~600回など不規則に動くのが心房細動。でもそれ自体は単なる不整脈。

ヤバいのは下部の「心室」の細動。こちらはメインエンジンなので、誤作動したら即AEDが必要、さもなくば、、、

詳細は「不整脈 / 心房細動」by ジョンソン&ジョンソン社 などご参照
→ https://www.jnj.co.jp/jjmkk/general/pulse
上側の心房が細動すると、まず「胸がどきどきする」「胸の不快感」「胸の痛み」などストレートな症状が出る。

心臓のポンプ機能が低下するので、「運動時の息切れ」も出てくる。実際この話は複数聞いたことがあり、他人事ではない。

最も怖いのは、細動により心房内に血栓(血液の塊)ができやすくなる。これが脳の血管にいくと脳梗塞。死んじゃう。高血圧、糖尿病、加齢(75歳以上)などが加わった場合にリスクが上がる。
通常、運動習慣はこれら成人病系のリスク要因を抑える。そのメリットとの差し引きになるわけだが、メリット以上に、心臓の酷使によるデメリットが上回る場合があるということだ。

心臓の機能低下なので、悪化すると、心不全につながることもある。(このレベルになっても運動を続けてる人は、そういない気もするけど)

「スポーツ誘発型の心房細動」とは

激しい持久系トレーニングを継続すると、心房細動のリスクが上がる。上記論文にはいろいろとデータが上がっているけど、体質差も大きいし、運動や生活の仕方からしてみんな違うわけで、いちいち挙げても仕方ないだろう。なる人はなるし、ならない人はならない。

同論文に書かれているエビデンスとして、
  • ヘビーに練習するアスリートは、心房細動リスクが平均3〜8倍高い
  • ベテランのエリート・アスリートでの発症率は15%
  • 若く心肺疾患がない患者の60%に激しい身体活動歴がある 
等々の結果が、数々の大規模調査により報告されてきた。

しかし、論文タイトルから "what we know and what we do not know" となっているくらいで、その仕組みや基準については、よくわからない部分が多いよ、とはっきり書いてある。

こんな時には、「わかっていること」について、より確度の高いものから順に、推測を積み上げていくしかない。

学界において、仕組みとして推測されるのは、心房の拡大(心肥大)、そして線維化=本来の筋肉の働きが失われること。

その要因として怪しまれている容疑者が、
  • 激しい運動による心筋負荷
  • 炎症
  • 酸化ストレス
    など。(この説明は論文Table1の黄色い枠の表など)

    詳しくはGoogle翻訳かけて元論文を読んでみてください。よくわからない、ということが、よくわかると思うから。

    とはいえ、だんだん見えてきたものも多く、同時に世界の市民アスリートたちの関心も高まっていて、インパクト強い情報が、研究界のみならず、スポーツの現場からも立て続けに発表されている。2−3ほど紹介しよう。

    意見A. デイブ・スコットの考え

    まず伝説のトライアスリート&名コーチ、デイブ・スコットは、2018年6月の来日講演から、長距離選手の心臓の健康について対応を説明して説明している。

    2019年3月に投稿された動画では、高強度×短時間トレーニングを推してる。
    ❝ 心拍数をあまり上げない長時間の運動は心臓に良い、と思われがちだけど、誤解。
    高強度×短時間でメリハリを付け、心臓のポンプ機能を強化した方が、実は心臓は健康になる ❞

    その前2月の動画 "Optimizing Your Heart Health" では、
    ❝ 長距離アスリートに心臓の問題が多いのは、量を詰め込み過ぎること、貧弱な食生活による ❞
    と、オメガ3系脂肪、抗酸化物質の摂取などを(サプリ=日本ではアスタヴィータ=の宣伝込みで)説明している。

    炎症と酸化ストレスについての考え方は上記論文と共通する。高強度が心臓に良いとはデイブ独自見解。

    デイブの指導理論は全て健康と結びついている。彼自身が、心房細動を持ち、アブレーション手術もしている。この経験を自分1人のものとせずに、世のアスリート全てが健康であるように、と活動するのが彼らしさだ。

    同様にご自身の体験をもとに提言されるのが大阪で活動される溝端コーチののFb投稿 ↓
    https://www.facebook.com/ycdgonow/posts/1205275562960692
    心臓手術後26年に渡り耐久スポーツを楽しみながら、症状を抱えるアスリートへの指導もされている方だ。このブログも参照いただきながら、スマートウォッチなどの最新機器の日常的活用を勧めている。AppleWatch なども発展途上だけど、わかる範囲だけでも数値化し把握することには意味がある。


    意見B. GCNの専門医インタビュー

    この投稿の直後の2019/6/27, 今度はFbフォロワー100万超のGlobal Cycling Network(GCN)が「あなたの心臓は、サイクリングするのに、どの程度健康か?」という特集をしている。スポーツ心臓の専門家、自らアイアンマンも完走しているブリストル大学Dr Graham Stuart先生へのインタビューだ。
    14分あたりから核心に入り、「やりすぎは心臓に悪いのか?」との質問に、
    • 長時間トレーニングを長年続けると、心房細動 (atrial fibrillation)のリスクはざっくり4−5倍に上がる
    • でもそれ以上に、各種ガンなど致死的な病気を防ぐ健康効果は高い 
    • 結論として、トータルでは健康になるものだから。心臓など症状があるなら医者に相談を
    という結論。

    GCNは世界的な自転車動画メディアで、元はよくある一般人ブログかな?日本なら「IT技術者…」的な。元トップ選手の土井雪広さんを迎えた豪華な日本オリジナル版まで始めるほど成長している。この動画も、体裁こそラフだが、内容的にはTVの30分番組くらい濃い。

    デイブもGCNも、SNSのコメントに体験談が多くて、切実な問題であることがよくわかる。

    考察A. 疲労&リカバリー

    以上ふまえ、まだわからないのは、「じゃあ自分ならどうするか」という話だ。ここからgは私の個人的な見方を軸に、考えてみよう。

    この仕組みは、通常の骨格筋レベルでの疲労とリカバリーの関係と同じだ。
    心臓&血管も、筋肉である以上は、同様にリカバリーが重要である、と理解できる。
    • 高い負荷を心臓にかけた後、
    • 中途半端な回復のまま、
    • 次の高い負荷を積むことで、
    • ある種の損傷が解消されないまま、拡大してしまう、

      と僕は理解した。
      ( "As for the right ventricle, it has been postulated that such damage develops after incomplete recovery between exercise bouts, thereby leading to permanent damage to the atria." などの記述より)
      そこで、リカバリーとは、単に時間的な空白だけでなくて、酸化ストレスに対しての抗酸化も必要。つまり野菜果物をたくさん食べろ!ということになる。

      特に心臓の筋肉は特殊で、一生同じものを使い続ける必要がある。一度損傷したら、基本的には、回復しない。
      個人的体験も書いておくと、僕が気をつけていたのは、高負荷トレーニングの後に、クールダウンの時間をかなり長く取っていたこと。よくある「メニュー後15分」とかではなくて、心臓を落ち着かせるまでの間、緩やかに身体を動かし続ける。数字で表しにくいけど、数時間はそんな状態が続く感覚で、その範囲内で時間の経過とともに必要なリカバリー作業が減っていく。その間はアルコールとかもあまり入れない。(缶1本くらいはOK)
      これは知識とかではなく、身体の感覚として、やっておくと良い気がした。その方が心臓が落ち着いてくれて、次の高負荷トレーニングにスムーズに入れる感覚があったので。(逆に、高負荷トレーニングをするつもりでも、スムーズに入れなければ、即やめてた)
      もっと現実的なリスクとしていうと、スポーツ性の心房細動で血栓が発生した時に、脱水で血液がドロドロしているほど、脳内で詰まりやすくなる。夏場、長時間、あるいは飲酒翌日などに起きやすい。水分補給はこの目的からも重要。

      考察B. 10年間

      ここは判断が難しいところだと思うけれど、「10年続けての発症が多い」とは、統計データをもとに、この論文筆者のバルセロナ大の先生が、「このあたり?」と引いた基準。単純に裏返せば「10年続けなければOK」となるけど、確率論なので、何年ならOK、という問題ではない。同時に、運動習慣による心身のメリットは大きいから、その+-バランスも関わってくる。そこで、自分ならどうする、という自己責任での判断になる。
      ※特に、こういう数字は断片だけ独り歩きしそうで怖い。そこをあえて書いているので、紹介などされる際には、まず根拠からきちんとご理解くださいね
      僕がレース用の負荷を上げたトレーニングしてたのは2010初夏から2015春ごろまで、5年ほど。その中でも「ピーク」といえるのは2012年末からの10ヶ月だけ。「たぶんこういうことかな?」程度の話として書いている。

      僕は5年やってみて、気持ちのレベルで、十分やった!と思えたので、スローダウンしただけ。それくらいなら、身体性能的にはフレッシュだと思っていて、結局、心身その他の総合判断として、自分はどうしたいのか、という価値レベルの話になる。その上で僕は、またどっかでピークチャレンジしてみたい気もするけど、まあ、40後半という中途半端な年齢の今ではない。9月の村上に向けてまあまあ練習は再開してゆくけども。

      フレッシュな状態でいる、というのは大事なことだと思っている。

      結論

      現実に、この病気のリスクが気になるほど負荷を積み上げている方は、そんなに多くはないかなとは思う。今、自覚症状が無いなら、心配するようなことではないだろう。

      ただ、心房細動は進行性で、一時的な発作のうち、年5%ほどが慢性症状へ移行する。常時心臓を気にする生活とは想像したくないよねー。おかしな脈拍を感じたら、早めに専門医にかかったほうがいい。
      ※スポーツ性の不整脈は、ベッドで寝て安静時で取る普通の検査ではわかりにくく、実際の心拍数まで上げる「負荷心電図検査」を行う。横浜市スポーツ医科学センターなどで受けられる模様。
      とくにトライアスロンは、筋肉を3種目で使い分ける分、心臓に負荷が集中しがちな面もある。普通の人の運動習慣としては身体に優しいのだけど、ピークを目指した時には、気をつけた方がいいかもしれない。

      ともかくも、栄養・睡眠・休養の重要性を、今一度、考えさせられる。

      トレーニングとは、負荷によって、身体に炎症と酸化ストレスを与える行為。それは筋肉でも心臓でも同じこと。その負荷と回復の波を、自分の思考と感覚で制御してゆく。スポーツとは結局ここに尽きると思う。



      自分にとっての答えを決められるのは。結局、自分1人だけだ。



      ※付記
      ここで取り上げた論文は、登録2,800超のFacebookグループ「トライアスロンを科学する会」で紹介されており、そこでの議論を参考にこの投稿を書いてます。関心ある方はご登録の上で、ぜひ議論に参加ください。
      私は文系バックグラウンドの者ですが、世界水準の社会学を知る教官に指導された修士=Masterとして、汎用的な学術論文の解釈スキルは持っているつもりで、それは医学論文である当論文でも例外ではありません。(実際、レビュー論文を読む上では、文系理系や専門分野の差などが、それほどには、障害にならないものです) 
      あくまでも私の個人的視点による文章でもあり、批判的議論は常に歓迎します。ただ 最 低 限 の 知 的 マ ナ ー として、ご指摘は、具体的な記述内容をもとに、具体的かつ論理的に、お願いいたします。私のこれまでの理系分野を含めた発信については、理系専門家の方々にも、概ね、ご賛同いただいておりますので。

      2019/03/23

      "長距離スポーツの糖質制限" と "強度" との関係

      "糖質制限×スポーツ" という世界的トレンド

      昨冬のセミナーを記事化した→ 「“糖質制限 × 長距離スポーツ”の教科書 by 小谷修平」 ←は、僕が参加してるウェルビーイング・ラボ by MAKES の記事で最も読まれていて、閲覧数トータルで万に行ってるそう(表示される閲覧数は一定期間)。 GARMIN4個あたるキャンペーン でもコメントが多い。

      小谷さんは、24時間で東海道新幹線ほぼ東京ー浜松間(257.1km)を走るために、このレベルの方法論を必要としていたわけで、そのストイックさにみなさん驚かれるわけだけど、"糖質制限による脂肪活用" という手法は世界のスポーツ界での一つのトレンドでもある。テレビCMのコミットしてるアレだけではないのだ。

      そこで自ら試みる市民アスリートさんも周りに目立つのだけど、よくある落とし穴は「トレーニング強度」を許容限度を越えて落としがちな点かなと思う。この文章ではこの件について僕の考える現状認識と対応を書く。

      世界のトレンドの一端が、トライアスロン界の生ける伝説、デイブ・スコット(Dave Scott)65歳。その脂肪食理論について、4,000字の記事「世界の長距離スポーツ理論 by デイブ・スコット」2019.03.19で書いた。みなさん関心高いようで今時点のFacebookシェア17 ↓ ↓ ↓


      事例

      この記事↑ ↑ ↑でも少し紹介したのが、2018年アイアンマン世界選手権エイジ8時間24分のコース記録だしたダニエル・プルーズ(Daniel Plews)教授だ。低糖質高脂肪食(LCHF)によって脂肪活用力を高めて、毎分1.2 g/kgの脂肪酸化力を獲得、これ運動不足な一般人(毎分0.28g)の約4倍、通常の市民トライアスリート(0.53g)の約2倍だ。

      なお練習量が豊富なら、脂質活用能力は、何食べてようが(ある程度は】上がる、という面はある。彼の量の積み方は ブログ にも(英語で)書かれていて、日本語ではパパサラリーマンさんブログ 「IRONMAN 一般人の世界新記録で優勝した王者の練習!質も量もハンパじゃない…」 で説明されている。

      ただ、これだけできる人もそうはいないし(Plewsさんもそれ続ける気はないらしいし)、彼が指導する市民トライアスリートもそこまでできないだろう。想像だけど、彼には自分の考えを圧倒的結果による証明したい、という動機があり、仮にこれだけの量は不要だとしても、万全を期して徹底的に準備をしたかったのでは?て気もする。

      失敗してませんか?

      自ら試して人で、それで長く続けられていて、成果も出てるのなら何も言うことはない(おめでとうございます)。ただ、うまく適応できてない人は結構多いはず。

      それ、もしかして「手法に縛られている」かもしれない。
      そうではなく「目的から考えよう」という話をしてみたい。

      (2019幸福学学会発表の帰り道、レインボーブリッジより)

      小谷さんの場合、徹底した低糖質食へと適応するまで、1度の失敗を含めてガマンの期間がある。そして良質なトレーニングができるようになるまでに3ヶ月の時間をかけている。
      ただそれは、それだけのメリットが小谷さんには存在するからだ。 エネルギー産出工場を作り変えることができれば、劇的な効果が見込まれる競技だから。

      でも、あなたが今ここで考えるべきは、「程度の問題」ではないだろうか。

      基準を明確に

      ロングのトライアスロン、あるいは100キロマラソンぐらいなら、そこまで徹底的に身体改造するメリットは、そこまではないことが多いはず。(本当に何も食べれない!とかの方は例外ね、当然)

      つまり、優先順位を間違えてはいけない。目標達成のためにまずスピードが重要な状況にあるのなら、 「練習の強度を維持する」ということをまず優先するべきではないか? そこをクリアできる範囲内で、摂取糖質を下げ気味にしてゆく、というアプローチだ。

      優先順位について考える場合にもう1つ重要なのは、時間軸。
      あなたが今、優先すべきものは何か?ということ。勝負レースまでどれだけの時間があり、どれだけ冒険(or 遊び)を混ぜられるか?ということ。

      優先順位は?

      僕の印象を書いておくと、多くの市民アスリートは、単純にスピード不足ではないかな?という気はしている。スピード=パワー×技術。
      たとえば…「ハーフマラソンまでは得意だけど(or 合計25kmのスプリント・トライアスロンなら強いけど)、持久力がないし、レース中に補給不足になるんです」
      といったケースでなら、エネルギー問題を優先的に解決することが合理的なのだが。

      で、あなたは「ハーフマラソンなら速い人」ですか?

      これら理解した上で、
      ❝ そのほうが結果的には楽じゃないか?と直感的に思うんです。一気に減らしたほうが、早く適応できるからです。人は緩やかな成長より、変化が急激な方がおもしろいのではないでしょうか。❞

      といった考えに心理的・精神的に共鳴するのなら、それは合理的な判断。
      ただ、そういった状況認識や戦略なくして漫然とマネをするのならば、結果も出ないし、何よりやっててHappyでもないことだろう。

      実体験

      これは僕自身の僕自身が経験した話でもある。
      トライアスロン開始3年、始めてハーフ113km, フルアイアンマン226kmへとチャレンジした2013年シーズンでは、
      • 「目標の練習スピード」をほぼ唯一の基準に
      • その範囲内で、「ちょっと少なめのエネルギー量で練習に臨む」
      という方針でロング対応をした。ここで「少なめのエネルギー量」とはトレーニング中に限った話で、終了後はしっかりと食べてたので注意ね。当時は糖質も脂肪もともに制限せず、ただ「大量の脂肪と大量の糖質を同時に摂ること」は控えていたはず。

      そして、僕なりに満足できる結果 (2013Kona 個人記録) を残すことができた。といって 表彰台は33分先、王者は55分先 にいたわけで、あくまでも個人的満足に留まるものではある。

      でも運動苦手な僕が、始めて3年での初チャレンジで、最も参加人数の多い激戦カテゴリで世界選手権の上位13%に入れて、という過程を含めて、自分自身に満足できているというのもHappyなことだ。僕は「結果を他人に褒められるため」にKONAを走ったわけじゃないしね。

      2015宮古島に向けて、脂肪活用を本格的に試してみようと思ったのだけど、「低糖質状態でトレーニングするということ」を優先目標にしてしまい、十分な練習強度を出せていなかった。ただこれは、作戦選択の失敗ではなくて、すでに気持ち的に完了していた、という面が強いのだが。そんな実験でもしてみないことには参加動機がなくなってた的な。

      結論

      "長距離スポーツへの低糖質食" を試してみるなら、まず "強度" との優先順位を明確にすると良いと思う。

      それが「手段に縛られない、目的から考える」ということ。

      目的から考えるとは、自分の目標レースをどこまで解像度高くイメージできるか? に行き着くだろう。

      2019/03/03

      「有酸素運動で脂肪燃焼」なんて古文書に替えて、「体重設定値」という最新減量法を。

      僕は体重が増えやすいのだけど、減量もわりと簡単にできる。+-8%くらいの範囲内ではあるけど。
      増量できる理由は簡単、胃腸が丈夫だからです、はい。
      ではなぜ減量できるのか、最近の理論的発見をこの文章ではまとめてみたい。

      <減量の教科書>
      最新理論の理解には、2019/1刊の『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』by ジェイソン・ファン 一冊で良いかも。
      一行でまとめれば、「体重の設定値」は肥満ホルモン=インスリンでだいたい決められているから、インスリンをコントロールすれば痩せられますよ、という話だ。
       逆にいえば、運動やカロリー制限は主たるターゲットではない。
      Amazonレビューが(サクラでなく)割れる本は面白いこと多く、低評価派のいう通り、細かすぎる話も多いのだけれど、おかげで、どれくらい信用できるのかなんとなく伝わる。そもそも体重変化の仕組みは今の医学で完全にわかるものではなく、ましてシンプルに伝えるのは不可能。「まあようするにこんな感じ?」くらい思えたなら十分。

      <「体重の設定値」という発想>
      次に「体重の設定値」は、どうすれば低く抑えられるか?と考える。
      僕の経験も交え整理すれば3要素あり:
      1. 睡眠
      2. 運動
      3. 食事
      十分な睡眠は基本、かつ変なストレスがないことは(=変なストレスの最たるものは睡眠不足)、大前提になる。しっかり寝れてさえいる限り、あとは食欲にほどよく従って食べていれば、おかしなことにはならない。理想は7時間。

      運動も、体重設定値をただしく保つ手段になる。運動によるカロリー消費量よりも、身体センサーを正しく機能させるためのメンテナンスとしての意味が強いのかもしれない。

      食事については、「インスリン分泌のコントロール手段」と置き換える(or 精緻化する)ことが、この本の大きな特徴だ。

      <太らない食事>
      では、そんなインスリン適正化のための食事とは、
      • 減: まず精製された糖、次に加工度の高い穀物の摂取を減らす
      • 抑: タンパク質は総カロリーの2-3割に抑え
      • 増: 良質な脂肪、食物繊維をもっと食べる

      これは『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』by 津川友介 2018/04
       など信頼できる類書とも共通する話だ。

      「糖質」と言っても、穀物の加工度という視点からは、精製小麦粉+砂糖の白いパンより、精米しただけの白米の方が良質と言える。『太らないカラダ』では白米なら太る原因とはいえない、との立場で、一般的な糖質制限派とも違う。
      砂糖のようなものを頻繁に食べていれば、インスリンは明らかに乱れるので、お菓子の増量効果はカロリー数値以上に高いということだ。

      <ファスティングの本質>
      これら基本を踏まえた上で、インスリンをコントロールする有効な手段として、この本では、
      • 間欠的ファスティング=時間限定のプチ断食
      を勧めている。

      ただし、あくまでもインスリンのコントロールの一手段としての推薦なので、同等以上の効果があるなら別のものでいいわけで。だいだい僕は断食なんて嫌だし。

      そもそも『太らないカラダ』を書いたジェイソン・ファン医師は、腎臓病・糖尿病など内臓疾患を治療する専門医であり、「運動」は幾つかある選択肢の一つに過ぎないし、運動がマトモにできなくなっている患者さんも多いことだろう。

      しかし、今この文章をお読みの皆さんは、多くが運動を前提に体重コントロールをお考えであるだろう。この立場の違いは、意識して読んだ方が良い。

      そんな運動派のみなさん(たぶん)に僕が提示したいアイデアがひとつ。
      「強度の高いトレーニング」は、ファスティングに相当、もしくはそれ以上なのではないだろうか?

      <有酸素運動の本質 〜なんてものはない!>
      こう考えると、「有酸素運動で脂肪燃焼」という20世紀にばらまかれた古文書の限界を考えずにはいられない。

      これ先日ツイートしたら表示3万超と割と読まれた。拡がる余地があったということで、もっと知られるべき話ってことだろう。

      「有酸素運動」とは往々にして単なる「ユルいダラダラ運動」でしかない。にもかかわらず、「有酸素運動で脂肪燃焼」という昔の呪文を唱えることで、あたかも脂肪を減らすことができるかのような誤解がひろまっているのではないだろうか?

      しかし、それでは現代文明で鈍った身体に対して、ユルくて閾値を下回る程度の刺激しか与えることができないのではないかな? おもいっきり運動できる健康な僕らは、しっかりと高い負荷を正しい方法でかけることで、「体重の設定値」を適正にセットすることができるのではないだろうか?
      2月、粉雪の舞う都内で自転車を走らせ2015宮古以来ほぼ4年ぶり再開したムロヤさんには「いつでもレース復帰できそうな身体やね!」と社交辞令いただいたのだが太っていないこととレースできることは同じではなく、笑
      ・・・

      スポーツにおける脂肪活用力を高めたいのなら、私が企画&執筆した連載
      ❝ 「糖質制限 × 長距離スポーツ」という手法の教科書 ❞
      シリーズもお読み下さいな。



      この手の話題もさらに深めていく予定なので、もっと知りたい方、SNSフォローください。

      2019/02/24

      トレーニング科学の意味  ー乳酸研究会2

      1年前の今ごろ、中日新聞朝刊3面「この人」に掲載いただいたのでした。5日後には東京新聞にも同内容で。Wikipediaによれば合計302万部。普通の中日読者さんはこんなの読んでないだけで笑

      記事で「〜自分なりの世界観を見つけて生きる助けになれば」と纏めていただいたのは、市民スポーツの1つの核心でもあると思う。

      なぜなら、情報と刺激が過多な世の中で、身体の存在、という事実だけはシンプルだからだ。そしてスポーツの過程に正解はなくて複雑そのものだけど、ゴールで、自分の身体が今ここにあるという事実は、何にも揺るがされることのないただ1つの正解であるからだ。

      < トレーニング情報の選び方 >

      いっぱいあるトレーニング方法とかの選び方もそう。
      結局やってみて、自分の身体に効いている感触があるなら、それが正解ということ。

      とはいえ、身体は1つ、時間は有限。実行してみる前に出来る限り理解して、自分に合いそうなものを絞っておくのは大事。

      その際、トップアスリートの経験則が参考にされやすいのだけど、それぞれの「背景・課題・意図」は当然に違う。みんなそれはわかっていて、それでも参考にされるのは、「物語」をイメージしやすいからだろう。競技実績で実証された人物の体験をモデルに、自分自身を物語の主人公として、ハッピーエンディングをより強く信じられるから。

      一方で、科学とは、個人の物語を消去して(※エスノグラフィーなど除く)、一般化・抽象化する。これにより汎用性を得る一方で、個人的なイメージ力はどうしても落ちる。

      そこで「誰もが知っている有名選手についての理論解説」がなされると、この課題はクリアできる。前回ブログで紹介した東大・近藤秀一選手のPolarizedトレーニングについての発表は好例。

      < 近藤選手の「背景・課題・意図」 >

      乳酸研究会の全体は、八木慶太さん記 「第15回 乳酸研究会@東大 メモ」 にまとめらてるのでどうぞ。発表者の竹井尚也先生に、後にTwitterで八木さんとタッグ組んで質問したら、

      ❝ 夏合宿やマラソン前は長い距離の走り込みも多少ありますが、それでも中強度:高強度=1:1くらいです。鍛錬期はしっかりPOL(Polarized)をやってLTやOBLAを向上させます。レースに近づいたらレースペースの練習も多くなります。❞
      など丁寧に解説いただき、「背景・課題・意図」まで具体的に知ることができた。

      < 乳酸利用に期待しすぎない >

      もう1つ質問できたのは、前回書いた乳酸研究会での榎木先生の「乳酸利用」について。それはあくまでも1つの視点であって、全体的には、以下のように理解するのがわかりやすいだろう。

      LT=要するに基本走力を上げろ、というシンプルな話ともえいるけど、体内の物語をより精緻に、豊かに、理解できるのは楽しい。
      (なお最近TwitterにはFbとかに無い良情報多いのに気付いて多用しています、掃き溜めアカウントも多いところだけど避ければ問題ないから。Facebookとはほぼ書き分けていて、このブログで集約できればいいかなと。Fbだけ読まれてる方はよろしければTwもフォローを〜逆も)

      < 長距離競技での筋損傷 >

      「長距離走中に発生する筋痛・筋損傷・酸化ストレスと運動パフォーマンス」との筑波・大森先生の発表で触れられていた要素も頭に留めておきたい。

      たとえばトライアスロンのバイクパートで脚が終わる、ラン後半全然走れない、等のケースは、筋グリコーゲン枯渇に加えて、筋損傷ケースもあり、どちらが自分のボトルネックなのか意識することは大事。
      トレイルランニングでも、ハセツネ優勝ほかで知られる神奈川の三浦裕一さんもスピード練を始めて結果を出してるようで、高強度にはレースでの筋損傷軽減効果もありそうだ。

      < トレーニング科学の意味 >

      このように、運動中の体内の変化を想像でき、「体内で起きていることの物語」が見えてくると、トレーニング中も、その中長期の過程全体も、知的に楽しくなるもの。

      といって僕自身はかれこれ2-3年間マトモにレースしていないし、本当に盛り上がっていたのは本に書いた2010年からの3年ほどのことなんだけど、、それでも、かつて自分の身に起きたことを振り返るだけでも十分に個人的に楽しいし、そんな僕なりの考え方がわかりやすい、と読んでくれる方もまあいらっしゃるようで、書き続けていきます。

      まあいずれまた自分の身体をレーシングマシン化したくなるとは思うけど笑

      乳酸研究会に出て、ライブで感じてから、SNSで文字をやりとりすることで理解が深まった面は確実にあり、やはりライブて良いなとも思う。レースは究極のライブだけど、演劇もライブ。で行ってきたのが:
      舞台「虎は狐と井の中に(仮)」2/19昼、ネットニュースとかでともすれば見下しながら消費してそうな社会の底辺を重く描く。
      トライアスロン日本選手権も出た慶應出身イケメン俳優米田敬さん企画講演。さとうほなみ=ほないこか(ゲスの極み乙女Dr.)さんが生命力溢れキラッキラしてる。これを間近で見れるのが小劇場!

      ところでこちら、
      スポーツでも多い「脳内でうまれるニセの痛み」について、
      痛み専門医、河合隆志先生による徹底解説を書いてます。

      インタビュー&執筆は私。
      よろしければ「いいね!」してお読みくださいな。


      2019/02/11

      【牛乳ほぼ最強説】プロテイン製品の過剰評価、ホエイ/ガゼインの誤解について

      ナリキン弁護士のトレーニング

      成金ならぬ「成筋」、小林航太弁護士インタビューが東大新聞オンライン(2019年2月7日)に掲載されている

      僕のベスト体重が165cm62kg、モモはかなり太かった(過去形)ので、2%高い身長を加味しても上半身だけで10kg近く多い筋肉をお持ちである。鶏肉の内臓抜き丸ごとで一匹2kgちょいだったりするので、鶏4-5匹を仕込んだ上半身。←手品か

      そんな小林弁護士の養鶏、ではなくてトレーニング内容は、
      ❝週5〜6回、体の部位を胸、背中、肩、足、腕の五つに分け「今日は腕の日」などと決め、1時間半から2時間かけてジムで徹底的に追い込みます。❞
      と、上半身が8割を占める。腕だけで1時間半から2時間を追い込む、とはすごい。これくらいやらないと、これだけの筋肉は製造されないものだ。


      ナリキン弁護士のタンパク補給

      成筋弁護士せんせい、食事について語るに、
      ❝1日に150〜180グラムのタンパク質を摂取するようにしています。体重1㌔当たり2〜2・5グラム摂取すると筋肉の成長にいいので。基本的に食事で摂取できる量なので、粉末のプロテインの摂取はそこまで意識していません。❞
      ジムで筋トレした直後には何らかのタンパク質を摂ってるはずで、そんな場面では粉末プロテインが便利。「そこまで意識していません」とは、こういうタイミング中心に、補完手段=文字通りのSupplement として利用しているということだろう。

      逆に言えば、それ以上の意味はない。

      かわりに500mlの牛乳なら、17gのタンパク質を24gの糖質と共に摂取できる。さらに数十g以上の糖質と一緒に食べれば、なんなら白砂糖をどばーっとぶっこむだけでも笑、立派なリカバリードリンクができる。乳糖ダメとか乳タンパクアレルギーだとか、500mlの量の牛乳は飲めないとかの障害がない限り。(牛乳500のめないなら17g相当のプロテイン粉末飲むのも難しい気もするけど?)

      「美味しくて飲みやすいプロテイン」てキャッチコピーよくあるけど、僕の舌的には、牛乳に砂糖なりハチミツなりバナナなりを溶かしたほうが、よっぽど美味しいし。


      リカバリードリンクとしての牛乳

      牛乳は機能的にも極めて優秀。

      東京大学 大学院総合文化研究科生命環境科学系 寺田研究室のFacebook投稿 によれば、
      • 運動終了後に糖質と牛乳を摂ると、グリコーゲン回復が高められ
      • その過程では、牛乳中の乳脂肪分が重要な役割を果たしている
      ここから、以下の仮説:
      • トレーニング後に乳脂肪豊富なアイスクリームを食べるとグリコーゲンが速やかに回復され、次回トレーニングの質が上がる。
      が導かれるのであり、事実これは「信州の速すぎるおっさんランナー」牛山純一さん提唱のアイシング理論
      → https://ameblo.jp/ushiyamaj/entry-12357909820.html 
      とも一致するのである。彼の好む乳脂肪の良質なハーゲンダッツは、良質なリカバリー用サプリでもあったのだ。

      ちなみにFacebookにこの話を書いたら、牛山さん御本人からコメントいただき、トレーニング後のタンパク質補給については
      ❝レースの後にアイス食べるくらいですね。ほとんど気にしてないです。❞
      とのことである。彼は若くて筋肉量の減少という心配も不要なのもあるかな? まそれであの結果を出してるわけだ。

      より詳しい英語論文が、"European Journal of Sport Science" 掲載
      → "Cow's milk as a post-exercise recovery drink: implications for performance and health" (Lewis J. James, Oct 2018)
      • 運動後に牛乳を飲むと、筋肉タンパク質合成、水分補給、グリコーゲン再合成に寄与し、運動後の筋肉痛/機能喪失を軽減
      • これらの点で、牛乳は市販されているほとんどのリカバリー用ドリンクに少なくとも匹敵し、しばしば凌駕する
      • 牛乳中のタンパク質はカゼイン最大80%+ホエー最大20%、この組み合わせは、運動後の筋肉タンパク質合成(MPS)を最大化するのに十分である可能性がある
      • 牛乳の筋肉タンパク質合成力は豆乳を上回る
      など牛乳の優秀さが書かれている。

      そもそも牛乳とは、哺乳類を育てるために最適進化した結果物であるわけで、豆乳より優秀なのは、そりゃそうだろうと。そして乳由来のプロテイン製品とは、ここから他の栄養素を捨て去った加工品ともいえる。


      ホエイ/カゼイン、筋肉の付き方は同じ!

      この寺田研究室は、プロテインの種類ごとの違いについての研究成果も紹介している。

      プロテインの種類の違いで「ホエイは消化吸収が速く、カゼインは緩やか」と言われる。そこで「トレーニング直後はホエイ、寝る前にガゼイン」など言われることがある。
      でも現実の効果を科学的に調査すると、
      • たんぱく質の合成速度は、両者とも同じ
      • 効果が明白なのは、「運動後に糖質と一緒に何らかのタンパク質を摂ること」
      まあ人間なんらかのストーリーを信じていたいもので、トレーニング直後なら速いほうがいい、とかくらいは信じてみるのも悪くない。ただ、それがこうじて、
      ❝ホエイプロテインはムキムキになりたい男性用、ソイプロテインはしなやかな女性的な身体向け❞ (森拓郎さんがTwitter @moritaku6 で紹介する展示会でのエピソード)
      なんていう嘘情報が平気で流れていたりする。
      真実は、
      ❝日本人に多い乳糖不耐症で乳製品由来のホエイプロテインが苦手という人は大豆由来のソイプロテインに切り替えるという、選択肢の問題だけ❞ (LEE "中野ジェームズ修一さんに聞く!医師の「運動しなさい」に、大人の女が最初にすべきこと【河崎環・ママの詫び状 第11回】"2019/02/07)
      力のあるライターさんによる記事で、ここ確認しないといけないくらい、このテキトーな情報は蔓延している実態がある。
      (なお乳糖とかの問題あるから、牛乳を誰にでも勧めるものではないのは当然ね)

      正しい情報をー

      ついでに、「EMSで電気ピリピリ通して筋肉育成」、なんてのについては
      ❞運動を避けて筋肉量を上げることはできません。筋肉を作るのは筋トレだけ、EMSの電気刺激だけでは筋肉はできません❞ (同)
      ですので。そらそーでしょ!笑
       
      細かすぎる=実質の効果のない情報に振り回される方が多い気する。

      大豆と牛乳の違いにしても、完全ベジタリアンでも筋肉ムキムキな方もいるし(スコット・ジュレクもそれ系かな)、そうたいした差ではないはずだ。

      必要なのは、
      1. 的確な情報源をもとに
      2. 自分の頭で論理的に考えて
      3. 「おカネで買える飛び道具」に頼らない!
      ことだよねー。
       
      ちなみに、Amazonのプロテイン製品のリンクを貼るとアフィリエイト率8%=5000円なら400円バック、1800円の本だと3%=54円で、こうした補給食系はブロガー的には美味しい笑。
      なのでリンクは貼っとこ笑  まあ実際、ジムのトレーニング直後とか、バイクでロングライドしてから長い休憩とか、あると良いタイミングはあるから。

      まずは正確な知識ですよ。『使える筋肉・使えない筋肉 アスリートのための筋力トレーニングバイブル 』ぱらぱら読んでみたけど、たしかに良書です。

      なにも買わん!という方も、私担当してる→ https://www.facebook.com/wellbeing.labo/ ←フォローくださいな。人生アクティブ100年時代をテーマにいろいろ書いたり集めたりしております。

      2019/01/06

      40代からタイムを上げる基本:VO2maxとLT

      WIRED記事
      「40代からマラソンのタイムを上げるには? ランニングと年齢をめぐる最新科学」 との2019/1/2付の長いWIRED記事。こんなタイトルつけられたら読まずにいられない笑。いろいろ書かれているけど、まとめれば、

      1. 最大酸素摂取量(VO2 max) =maximal oxygen consumption, Vはvolume
      2. 乳酸性作業閾値(LT値) =lactate threshold, もしくは無酸素性作業閾値/AT=Anaerobics Threshold

      を高める目的でトレーニングしろ、てことだと解釈した。

      この2つは「長距離競技の3大要素」でもある。残りの3つめはエコノミー=動作技術だけど、性質が違うので、ここでは触れない。

      1つWIRED編集部につっこんどくと、記事の内容は、最新科学をまとめた情報集というより、アメリカのWIRED編集長NICHOLAS THOMPSON44歳が自ら体験したものを、じっくりと書き上げたルポルタージュだ。サブタイトルの「最新科学」とは日本側がPV獲得のために、、、読者のことをおもって気を効かせ追加した風でミスマッチ感ある。

      その体験内容は正しく、大迫傑が日本記録更新したシカゴ2018で2:38の自己ベストを出してておめでとう。もともと30歳で2:43で走っている力があり、ただ若さと体力に任せた練習を漫然と続けていたので、加齢により落ち始めた、という美味しい状況=そら何やったて効くよ笑=からのスタート。で実際、意図を明確にしたトレーニングに切り替えて、出した2:38という結果が素晴らしい。

      アメリカ版の原題は "AN AGING MARATHONER TRIES TO RUN FAST AFTER 40"  "TRIES"=数々の試み、という表現がより正しい。日本版PV気にしすぎ気を利かせすぎ(笑

      記事には他に「ビーツのジュースを飲む」とかあるけど、僕の読者にそれ真に受ける人そんなにいないと推測する。要するに、いろんな野菜果物食べようね、という話だよね。


      1.VO2maxはどうすれば高められるのか?

      その定義からシンプルに考えれば、「エンジンの排気量」に喩えられる最大酸素摂取量を高めるには、2〜5分間くらいの「ほぼオールアウト」(正確にはちょっと手前)のインターバルが主となる。1回に3−6本くらい、週1−2回の頻度で、2-3週間続けてみればいい。

      ランニングなら1−2km走。バイクならローラー(インドアトレーナー)の2〜5分間走がやりやすい。時速40kmで2km走ると3分間、60kmhなら2分(無理)。この強度を公道でやるのは僕は怖い。

      これを応用すると、「2〜5分間のパフォーマンスは、どのようにすれば上げれるか?」という問いになる。その答の1つがタバタ式などの10〜30秒間の高強度インターバル(HIIT)。最近流行ってるのは、そのスポーツ科学的なエビデンスが出てきたことが大きい。ただトップ選手たちはエビデンスなんて待たずにとっとと実行してきたこと。エビデンス依存は弱さの表れってこともあるから注意だ。

      その中間、ランの400mインターバルも同じ効果がある。

      これだけです。きちんと実行できる限り←これ難しい

      最新スポーツウォッチは(僕のSUUNTO Spartanも)推計値を出してくれるけど、しょせんは推計値。それで速くなるとは思えない。ただ、「気分がアガる」という効果はあるだろう。副作用もあり、余計な情報に脳のリソースを取られて、本質への集中を妨げられかなねいことだ。

      最新デバイスの意味はそこではなく、より正確なGPS計測により、1kmや2kmのタイムをより正確に把握できることにある。正確な1kmを走ったタイムなら「絶対的な数値」だ。
      HIIT系は感覚に頼るのが基本だけど、バイクのパワーメータならクリアできるか。スイムの25mダッシュインターバルもそうだけど、プールの集団練習は水流に乗るので、それ次第でタイムが変わる。


      2.LTはどうすれば高められるのか?

      エンジンの「レッドゾーン」の境目という喩えが的確な乳酸(or 有酸素運動)閾値には、やはり定義から、20−60分間の一定ペース走が基本。記事にあるランニング15km走もその1つだ。僕が好きなのは徐々にペースを上げて最高速フィニッシュするビルドアップ走。

      こっち側はやってる人多いと思われ、そう問題ではないだろう。
      https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10213020049271601&set=a.1912044116487

      では、なぜ40歳からこの2つを意識するべきなのか?

      その大きな理由は、記事にもあるように、筋肉量は年齢とともに減少するから。
      それにより、まずVO2MAX域のパフォーマンス低下を起こす。
      上限が低下するわけだから、持続可能なLTゾーンも低下する。

      逆に言えば、30代くらいまでは、意図の不明確な練習でも、筋肉量は維持され、パフォーマンスも高く維持しやすいのだろう。特に練習量が豊富に取れる場合には。

      しかし加齢により疲労回復も遅れるから、昔のような練習の質と量もできなくなる。これは仕方ない。差がつくのは対応で、そのために、まずは課題を明確にしておくべきだ。

      このWIRED記事は、実際それで効果出たよ、という証拠固めといえる。


      僕はスピード教の信者です

      よく見かける(気がする)のは、
      • LT側=持久力に偏重し、
      • VO2側=スピード不足のまま
      であるために、トータル成績が伸び悩むケースね。この場合、「練習距離は多いのに???」てなりがち。LT錬(正確には強度不足LTもどき練)は距離を稼げるから。

      初心者レベルでは、「高強度で追い込む感覚」に慣れていないことによる「強度不足LTもどき練」も多い気がする。

      僕の経験的学びでは、
      • エコノミー=動作技術の向上には、最高速度チャレンジが役に立つ
      • 特にバイクでは、短距離のスピード向上は、距離を伸ばしても持っていける
      などある。

      かくして「長距離競技の3大要素」が全てクリアされるわけで、結局、スピードが多くを解決すると思っている。

      さらなる長距離化
      競技時間が90分を超えてくると、さらに「脂肪燃焼能力」というテーマが浮上する。この点は改めて

      2018/11/04

      大迫傑の腕振りの進化と、典型的日本ランナーとの差 - ランニング動作論3


      重たいものが動いた時、そこには力が発生している。

      「腕振り」についてあてはめると、腕だけではせいぜい3kg(62kgの私のTANITA計測)。しかし、腕により駆動される胸郭全体まで含めれば10kgとかになる。両側あわせた回転運動としてみれば20kgとかになるだろう。

      つまり、腕振りで最も意識するべきは腕ではない。胸郭の横回転だ。
      胸郭の動作により運動エネルギーが生まれる。そのコントロールのために腕を動かす。

      これ、たしか僕のトライアスロン(とラン)1年目の2010年のレース終盤、脚が止まりそうになった時に降りてきた感覚がもとになっていると思う。おかげで、明らかに練習の蓄積のないランを武器にできたかな? まあその成績レベルでは、という程度だけど。またこの視点で、トライアスロンでラン世界トップレベルのジョーゲンセン選手や上田藍選手の動きも納得できた。

      では、人類最速、陸上エリートランナーではどうか?
      その好例な動画がTwitterで流れてきた。大迫傑選手の学生時代からの、腕振りの差だ。

      今

      上は今の走り。
      アフリカ系ランナーみたいに走っている。

      路面はクロスカントリーで、NIKEヴェイパーフライの反発力は削がれているだろう。(NIKE契約の世界のトップランナーはみな不整地で多くの練習をしている気がする)

      学生時代


      下は学生時代のトラック。
      小指の後ろで着地するフォアフット走なのは,
      当時から変わらない。






      2018/11/03

      重たいものが動いた時、そこに力が生まれている - ランニング動作論2

      10/26夜, ウェルビーイング・ラボ by MAKES ランニング講座を開催。このプロジェクトは100年人生を幸せに生きるヒントを提供してゆくのだけど、1つの軸で、市民アスリートの支援もしていきたいなと企画してみた。

      前回ブログ「スポーツ動作を説明するということ」では、
      "「質の高い練習」とは、まずは「質の高い動作を導く練習」である "
      とさらっと書いた。質問とかいただいていないから、みんなよくわかったのかな?
      「じゃ、質の高い動作って何ですか?」
      と僕が訊いたら、どう答えますか?

      そんな会話をしてみたいな、と企画した講座。というか、ふだん書いてる話ってどれくらい伝わってるのかな? と確かめてみたい気持ちもあって。(実際伝わっていないこと多かった、、)
      「なにそれ? そんな話今聞いた!」という方、まずはフェイスブック https://www.facebook.com/wellbeing.labo 「いいね!」か「フォロー」ください。いいね!の方が強度が強く、更新情報が表示されやすいようです。(Facebookは書いても表示されない投稿が多いから)
      質の高い動作、とは、まずは物理法則に沿っていること。

      僕の考えでは、ニュートンの運動方程式、「質量×加速度=力」という仕組みに大きなヒントがある。理科のテストではこの式に数字を入れて計算したけど、アスリートに必要なのは「起きている事実」として理解すること。つまり、
      重たいものが動いた時、そこには力が発生している。
      重たいもの、とはランニングとバイクなら、まず思い浮かぶのは脚。タニタ体組成計によると体重62kgの僕は片脚11-12kgらしい。(どこで切断するんだ?)

      ということは、ランニングなら、ヒザを前に振り出して、振り子のように重力に任せて接地すれば、脚だけで10kg米袋、もしくは、2Lペッドボトル6本入りの箱をヒザの高さからドスンと落としたときのパワーが発生しているわけだ。体重40kg台とかの軽量女性でも大差はなく、せいぜい1本2本のペッドボトルを抜いたくらいで、その重量感は変わらない。

      バイクのペダリングとは、そのペットボトル入りダンボールを、時計11時あたりから前に投げ下ろすパワーだ。この重力感を無視した筋稼働は無理。

      それ以上に重たいのは体幹。どこで切り取るかにもよるけど、骨盤まわりだけで15kgとか20kgとかになるのではないだろうか。実際には身体の各パーツは連動するから数字に意味はなくて、要するに、とても重たいのが体幹。スイムはこの使い方で大きな差が出る。

      だから体幹から順に考える。
      いいかえれば、重たいものから順に考える。

      よくある誤解は逆だ。
      手足の末端の動きをマネしてしまう。
      いいかえれば、軽いものから順に考えてしまう。

      それは無理だよね。よくある「フォアフット論争」の無意味さも結局はここに尽きる。もちろん、マラソン2時間6分の選手が5分、4分、と目指すならまた別の意味もあるけど、あなたはそうですか?

      以前からブログで書いてきたランニング技術についてのいろいろな考えも、軸はこういうことだ。フェイスブックで紹介した猫の大ジャンプ動画も仕組みは同じ。これをランニングの腕振りに応用した話はいずれ書こう。
      しつこく書いておくと、早くしっかり書いて欲しい方はフェイスブック https://www.facebook.com/wellbeing.labo 「いいね!」「フォロー」を。たくさんあれば早くしっかり書いて、ライブもまたやります!
      なお自然界の法則によれば、生き物は年をとる。先日ハロウィンで逆らって13年前に(ネット内で)戻ってみたのだけれど、結論として、生き物は年をとるということがよくわかった笑
      だったら加齢した生き物なりにパフォーマンス出していこう、という話は、改めて。

      2018/10/28

      スポーツ動作を説明するということ

      金曜夜、ウェルビーイング・ラボ夜会 「走ることについて考える夜 - 体重活用編」 を実施。最近Facebookやブログで書いてきた動作の共通要素について90分くらいライブ説明した。参加のみなさんに喜んでいただき、僕も発見が説明しながらの発見も多く、やってよかった。

      同時に思ったのは、ふだん文字で書いてきたことも伝わっていないものだなあ、ということ。スイム動作については東京近辺の方には有料講習会で説明してきたので、その範囲内では誤解を解消できているつもりだけど、ラン・バイクについて時間をとって説明する場はこれまでなかったなあ。今後もやってみたい。(これ系のは Facebook で告知しています)

      「or条件」である
      スポーツ動作の説明は難しい。厳密にいえば不可能だ。そうわかっていても僕は説明するのが大好き。

      よく起こる誤解は、たとえば「ABC」と3つの話をしたときに、
      正解=A and B and C
      と「全要素のand条件」で「正解を求める」方向で受け取られがちなこと。
      この方法では、「一見キレイなフォームだけど速くない」、という状況に陥りやすい気がする。

      絶対的な正解が存在するのは高校生まで、センター試験で終了してるはずの世界。18歳から先は思考法をアップデートすべきであって、スポーツもその1つだ。

      正しくは、
      ヒント=A or B or C
      という「or条件」だし、そもそもが1つの「ヒント」に過ぎない。どれか1つがアタりなら十分だ。そして並列された3要素とは、Cが当たった時にABとも整合性を取れていればいい、というCheck項目の関係にある。

      「程度の問題」である
      その上で、耐久競技では「程度の問題」が加わる。たとえば、
      「上方での強い腕振り」という技術の活用度を、1km走なら90%、10kmなら75%、42kmなら前半40%後半55%ラスト7kmで80%
      と、レース距離(=正確には持続時間)に応じて、動作技術のボリュームを調整してゆく。

      のだけれども、その前に、
      「そんな動作では42kmも持ちませんよね?」
      という疑問で、思考がストップしてしまったりする。

      僕の考えでは、「長距離専門の動作、という正解」を求めてしまった時点で、すでに成長機会を逃している。


      「実験で検証すべき」である
      そこでオススメの方法は、最小単位で実験してみること。たとえば
      毎朝10km走るかわりに、1km×5に分割する
      という場合、走行距離は50%ダウン、実験回数は500%アップだ。

      こんな実験の中から、自分にとっての「妥当解」を見出してゆく。
      そして、その妥当な「度合い」を高めてゆく。

      「質の高い練習」とは、そういうものだと僕は思う。

      誤解

      よくある誤解の1つに、練習の質=心拍数の高い、パワー値の高い練習、タイムの速い練習、というものがあるように思う。

      なぜ誤解なのかというと、(昔から何度も繰り返して言っている話だけど一応繰り返すと)、こういった身体負荷の高さに頼った練習は、伸びしろが限られるから。動作技術の改善なら、それこそ大迫傑レベルでも伸びしろあるのは 最近Twitterで書いた 通りだ。

      でも、最近ではトレーニング内容の数値化が進んでいて、一見、とてもわかりやすいので、意識がそこに向かいがちな風潮があるように思う。

      すると例えば、「上下動の数値をより少なく走ろう」という意識も持ってしまいがちだ。でも多くの場合それは間違った努力。そうなってしまうのは、ランニング動作の仕組みへの理解がないまま、コンピュータを盲信する姿勢があるからではないだろうか。

      ここは超大事なことなので繰り返しておこう。
      「質の高い練習」とは、まずは「質の高い動作を導く練習」である。身体負荷の高い練習、を必ずしも意味するものではない。もちろんそれはそれで必要な練習ではあるけれど、「身体を超疲れさせたから質が高い!速くなるぞ!」というのは、必ずしも報われるものではない。

      ウェルビーイング・ラボ by MAKES
      今回の開催目的は、400年以上前に判明したニュートン力学の基本に立ち返って、ランニングの仕組みから理解すること。

      ランニング指導書は多いけど、このレベルで説明しているものはあんまり見ない。去年でた翻訳書 『ランニング・サイエンス』 などには幾らか書いてあったかな。たぶんランナー出身者が多いコーチ達には優先度の低い話なんだろうけど、僕がふだんいろいろ考え書いて、またトライアスロンするうえで、ニュートン力学は超使える実用的知識の宝庫だ。これを応用するだけで、かなりの疑問に対して「妥当解」を思いつくことができる。

      こんな核になる考え方があれば、いろいろ玉石混交な情報に惑わされず、使いこなすことができる。それに、同じ走るなら、仕組みから理解できていたほうが楽しいとも思うし。

      そんな価値観を共有する人たちと、まず「考えることを楽しむ」という場をつくりたいなと。それがこの形で実現できたのは、市民スポーツ支援に熱心な主催社メイクスさんのおかげです。その企業理念を発信する場のディレクションを八田は担当させていただいていて、その一環として今回のもあります。

      今後の同種の会に関心ある方、告知は当面、
      ウェルビーイング・ラボFacebookページ:https://www.facebook.com/wellbeing.labo
      を優先する予定です。フォローしてお待ちください。





      2018/10/20

      KONA2018web分析1 世界の強豪エイジ半端なし!

      10月に入りトレーニングを始めた。4年前までの感覚を体はまあまあ記憶しているけど、実行はまた別の話。再現しようとはせず、今は今なりに気持ち良い動き、状態を追求する。

      トレーニング効果とは環境適応反応、急に冷え始めた季節に適応するのと同じ仕組みだ。暑いの寒いのと騒がず少しづつ慣らせていけばいい。2週も続ければ新しい環境にいくらか慣れてくるものだ。10月14日=ハワイ13日とはちょうどそんな時期。未明からアイアンマン世界選手権KONAをバイク前半くらいまでネット観戦。今年も発見が多かった。Facebookにばらばら書いてきたことをまとめておこう。

      85歳の身体パフォーマンス

      まずはエイジグルーパー(=陸上水泳のマスターズ相当です)から。日本人的に最大のビッグニュースは🇯🇵稲田弘さんによる人類史上初の85歳のアイアンマン世界王者誕生! 記録16:53:49とは制限時間まで6分11秒、比率にして0.4%のギリギリセーフ。

      2015年大会では、スタート時刻の変更に伴い制限時間が16時間50分に短縮されたおかげで、
      16時間50分走った先の世界記録に「 あ と 5 秒 」届かなかった稲田弘さん(83)は、世界のアイアンマンの新たな伝説を作っていると思う (2015.10 by Hatta)
      で書いたドラマが生まれてしまったのだけど、その年も今までどおり17時間なら問題なく世界王者になれてたわけだ。でもそんな「もしも」を、85歳の今の行動により、吹き飛ばしてみせた。
      ※この件は後日、オリジナルな詳しいお話を提供するべく企画中です。(お待ちください)
      日本人では他に、75歳🇯🇵Nakata, Hiroshi さんが14:30で4位入賞。高齢カテゴリで(いまのところ)強い。強豪チームTRIONで6位+7位という健闘もあった。


      (画像はFacebook公式ストリーミング:IRONMAN World Championship brought to you by Amazon - Age Group Race Coverage Part 2 より、残り30分35秒あたりから)

      世界最速の「糖質コントロール」

      今年は風が歴史的な弱さだそうで、バイクのタイムが大幅に伸び、総合タイムも軒並み上がった。エイジ部門では 8:24:36(swim54:47 bike4:32:55 run2:50:56) というすごいコースレコードも生まれた。プロ込みで総合22位、ランは6位。

      そのエイジ記録更新者は、NZのオークランド工科大学 (Auckland University of Technology)教授の🇳🇿️ Daniel Plews博士️35歳。少年時代はエリート部門での競技歴があり、スポーツ科学者としてNZのボートや自転車のナショナルチームも担当しつつ、オンラインコーチング会社の共同経営者でもある。自らの体で理論を実践してみせた。プレイヤー、コーチ、研究者はそれぞれの役割は違うけど、一人で全部やってみせるのはすごい。学者としての究極の姿。

      彼の方法論はこれから調べていきたいけど、コーチング会社の紹介文にある
      the area of performance and individual improvement ・・・I've realised that much of what we've been taught is false.  
      we're now beginning to unlock the keys to performance, health and longevity
      なんてあたり、興味深い。

      具体的に、たとえば「トレーニングLow+レースHigh」の糖質コントロールもしている。レースでは毎時60g=吸収上限の糖質をとるが、日常的には抑えて脂質代謝を上げる方法論。これ、前に書いた
      耐久アスリートの「糖質×脂質」食 (2018.09 by Hatta)
      と共通し、その最新形といえるだろう。大量のエネルギー供給を実現するターボチャージャーな仕組みで、それを受け止め消費しきる大容量エンジンあっての話でもあり、そのエンジン側にも強みはあるわけだ。

      ・・・
      ところでエイジ総合1位がプロの中に食い込んでくることは結構あり、僕の出た2013年では、🇿🇦️ Buckingham, Kyle(29)が8:37で16位。彼はその翌年にプロ転向したけど、この順位は上回れていないんじゃないかな? 今年は総合24位、女子のRyfに17秒差まで詰められている。時間、環境が全てではないということだ。Plewsはプロによる高速化に対応してみせたのが独自の達成だと思う。

      「週8時間練習」の50歳の世界王者

      もう一人すごい人を。🇸🇪 Carl Brümmer50歳、優勝タイム9:05:37 (swim56:06 bike4:42:02 run3:21:19) 

      個人サイト、Mikael Erikssonによるインタビュー によれば、20歳頃はスウェーデン選手権6位までなった元エリート選手。後に仕事に専念し、営業畑で出世して、巨大製薬会社アストラゼネカの1000億円規模の事業部でMarketing & Sales Directorまで務め、今は独立して組織系コンサルタントをしてる。

      40歳からトライアスロン再開し、年齢増加とともにレースタイムを短縮し続け、アイアンマンのベストタイムは8時間台。そのための練習量は週8〜12時間だと。

      僕が一番興味あるのはこのあたり。稲翁いくらすごいといっても彼の年齢まで40年、21世紀も後半になてしまうし、Plewsの35歳に戻ることはできないし、笑

      もっと知りたい方へ

      なぜこんなことが可能なのか? 僕なりに幾つかの仮説はあり、最新情報も追っかけていきたい。関心ある(奇特な)方は引き続きこの奇特なブログ笑、フォローください。

      さらに、もう少し強力な仕組みを追加します。私のディレクション担当で新たに立ち上げた企業オウンドメディアでも取り上げていけると思うので、
      Facebookページ→ ウェルビーイング・ラボ
      フォローください。brought to you by 株式会社メイクスです。

      "brought to you by AMAZON"

      ちなみに今年の冠スポンサーはAmazon。主目的はスポーツ補給食のネット販売で、専用サイトも用意してる。アマゾンという会社が世界最強書店であったのは大昔のこと、今や「ロングテールの真逆」を行くベストセラー限定書店で家賃収入いれながら別の商売に熱心な会社→
        なので、僕の本はAmazonでは買わずに普通に書店で注文いただきたいのだけど、それはそうと、かれらがスポーツ食品販売に手を出してくるということは、この分野は儲かると判断してのことだろう。メーカーの利益率も高そうだし? するとWiggle,CRCなど自転車系ネットショップの補給食コーナーとも重なりもする。他の扱い品にも拡大してくるかもしれない? 

      2018/09/16

      耐久アスリートの「糖質×脂質」食

      先の「大坂なおみのダイエット」の真実 で、ベースとなる事実は断片的なもの。なにしろ10代の女の子向けのファッション媒体teen-VOGUEのインタビューだからね。でも、トライアスロンを中心とした耐久スポーツの栄養理論を踏まえて考えれば、きわめて合理的なストーリーとして理解できる。そんな仮説を書いた。

      今回は、その理論的骨組み、耐久スポーツの栄養理論について僕の最新の考えを書こう。

      <長距離アスリートの食事法>

      その耐久スポーツの方法論:
      1. 日常食: 糖質を抑え脂質は十分に
      2. トレーニング: 前後で糖質を十分にとる
      目的:
      1. 日常生活全体を脂質代謝トレーニング化する
      2. 練習の質を上げ、回復も早める
      その理由:
      • 長時間練習をしなくとも、長距離レース向けの重要能力を高めることができ(時間制約の大きな市民アスリートには特に重要)
      • その場合に重要度が上がる「短時間高強度トレーニング」では、一定の糖質が必要
      • トレーニング後のリカバリーのために、糖質でインスリンを分泌し、各種栄養素を同化させる
      というのが僕の理解です。

      この考え方は、6月に来日したデイブ・スコットも説明していた。詳しくはココログで書いたのをご参照→ " 短時間高負荷 × 低糖質 "によるアイアンマン226km攻略法 by Dave Scott」 



      <単純な低糖質食のリスク>


      注意したいのは、これは単なる低糖質食ではない、ということ。
      低糖質食療法の指導、その限界について詳しい鈴木功医師は、低糖質食を長距離スポーツで実行した場合について
      • ある程度は適応するが
      • 出力低下、回復の遅れ、といったデメリットが出てきて
      • 最終的に、成績低下&故障リスク増加するケースが多い
      という見解を9/6のFacebook投稿 で示されている。

      これらデメリットとは、私思うに、
      1. 糖質の強力パワー使えないから出力低下
      2. インシュリン不足によるり超回復しない
      3. 1+2のW作用により筋力が下がる
      4. 2+3のW作用により故障する
      といった流れかなと思う。
      前半に書いた方法なら、この問題を回避することができるだろう。

      <目的と手法>

      大事なことは、自分なりの目的に即して方法論を使い分けること。
      いいかえれば、ある特定の手法に依存してはいけない。

      手法とは、個々の目的のために、必要に応じて使い分けられるべきものだ。

      僕自身はレース中の糖質吸収能力が高いようで、レース中でもトレーニング中でも胃腸トラブルは一度も起きたことがない。たとえば「高負荷練習で吐きそうになった」とかの状態を想像することができない。また目標レースも2時間で終わる51.5kmトライアスロンが多く、脂質代謝がそれほど重要なわけでもなかった。

      なので、米とかはトータルでは割と食べていたし。実際、日常のすべてを変えなくとも、部分的に採用するだけでも効果は得られるとも思っている。そもそも僕の競技成績には、プロテニスのような何十億円ものおカネがかかっていないし。

      大坂選手の場合、何時間も続く試合中の糖質消費をセーブしたい、試合中の補給による血糖値変動を抑えたい、といった事情もある気がする。これはメンタル的な集中にも影響するだろうし。
      確実に言えるのは、体質的に合っていることをトレーニングで確かめているはずだということ。だから、僕の挙げた仮説すべてがあってなくとも、どれかハマるものがあったんだろう。

      結論; 糖×脂質の最適配分を探ろう。


      2018/09/15

      「大坂なおみのダイエット」と糖質制限の真実

      もしくは、世界最先端の食事マネジメント術について説明しよう。

      大坂なおみ選手、テニス全米オープン2018優勝記念の来日記者会見が、この木曜朝にあった。僕はちょうどアポの時間調整で日本橋あたりのDocomoショップ店内のWifiを使っていて、ちょうど生中継を店内のテレビで見ることができた。

      会見中、「ダイエット」という言葉がギャルの減量みたいに受け取られ、笑いが起きていた。しかしDiet=食事、アスリートが使う時は「目的を持った食事のマネジメント」を意味する。日本の大衆文化とグローバルな最先端スポーツとの温度差が、ナオミ選手の微妙な表情から伝わってくるかのようでもあるけど気のせいかも。

      その食事の詳細が、"teenVOGUE" ウェブサイト9/11に掲載されている。
      Naomi Osaka on Mental Health and Training to Face Her Idol at the U.S. Open
      食事面のポイントを抜くと:
      1. オフシーズン: 茹でた鶏肉・野菜中心、糖質は単独では摂らない
      2. 大会前: 炭水化物を摂らない
      3. 大会2週間: 朝食は同じサーモンベーグル
      4. 試合中: 必要量の糖質を補給、バナナも食べる
      八田の推測を交えて解説すると:
      1. オフシーズン=減量期: パフォーマンス不要の時期に余分な脂肪をカットしておく。筋トレも積んでゆくと思う。食事内容は、高タンパク×低糖質×低脂質。なおブロッコリーにもそれなりに糖質が含まれていて、完全カットしてるわけでもない
      2. トーナメント前=耐久性能向上期: 体脂肪活用能力を高めるための低糖質食であり、減量目的ではないはず。おそらく高脂肪食。筋トレはせいぜい維持程度かな。
      3. 食事での糖質を(ほどほどに)解禁し、即戦力エネルギーであるグリコーゲンを充填する。ただし20世紀型の「カーボローディング」はしない。また同じ朝食にするのは「ルーティン化」し集中する目的であるのは、食事以外も同様
      4. おそらく試合に限らず、多くのフェーズで、練習中も必要な糖質を控えめに補給しているとも思う(半分に薄めたポカリスエット的なのとか)
      このメソッドは、世界の長距離スポーツ界で行われるものと共通するのは、僕がふだんFacebookとブログ(旧ココログ)で言ってきた通りだ。

      いわばナオミオオサカはトライアスリートのようにフィジカルを作り上げてきたわけだ。一方でセリーナは筋肉量は十分だが脂肪も載ったシーズン前キャンプ入りした野球選手のような状態であったよう見える。試合開始時点でセリーナとのフィジカル面、すくなくとも耐久性能での勝負はついていた。
      「セリーナ、おまえはすでに負けている」
      この余裕がメンタル差をうんだ、ともとれるかな。

      動画はこちら:

      なおこの記事を最初に知った日本のネットメディアでは、新女王の食生活は「炭水化物はとらない」なんて書かれている。そんなわけはない笑

      すべては目的をもった脂質と糖質のマネジメント。ギャルじゃないんで笑