2018/11/13

24時間闘う精神力とは「言語力」である ー 神宮24時間マラソン観戦記2

<24時間マラソンという競技>
それは、日本人選手が(まだ)世界トップレベルで戦える競技。

日本人は、長時間を耐える活動にはおおむね強く、マラソンも42kmが単なる長時間競技であった時代には強かったが、アフリカ系がスピードを持ち込むと(=より正確には、腱の反発力を持ち込むと?)通用しなくなった。
大迫傑選手などはすでにアメリカ拠点のグローバルエリート、日本人の枠を飛び越えているし。(1億円分の所得税納付先もアメリカだよね?)

そこで、より長いところに追いやられて活路を求めてゆく。オリンピック実質最長競技の50km競歩も強い。(※自転車ロードは時間は長いけど根本的にパワー&スピードの競技であって耐久度は低い)

人気競技になってケニア選手が参入すれば別かもだけど。ただ、腱の反発力を活かせないスピード域になると、日本人体形のメリットも出しやすいかもだ。いつかガチ対決を見てみたい。

<都心で世界トップレベル大会、て知ってました?>
マイナー競技なのは「神宮外苑24時間チャレンジ・ウルトラマラソン」という存在を、僕も去年くらいまで知らなかったくらいだ。13回続いているってことは2005年から? 神宮外苑という都心で、最近では何十人かの参加ランナーのうち10人前後くらいが世界上位で戦えている、という高密度な場であるのにもかかわらず。


<24時間たたかえますか>
この長時間を、どう戦い抜くのか? 
3位表彰台、小谷さん11/11のゴール7時間後のFacebook投稿https://www.facebook.com/shuhei.odani の一文を紹介しよう。
2回弱気になる時間帯がありましたが「次の90分でキロ6プラス10秒くらいのペースを維持しつつ、喉の渇き感を押さえて、エネルギー収支も回復させる」みたいに前向きな小さな目標を立てて自分をコントロールできました。
に、大きな手がかりがあると思う。

ここに含まれる要素とは
  • 時間: 次の90分、というブロック内での身体反応の予測
  • ペース: 1km6分(=24時間で240km、目標より遅い)のさらに10秒プラス、という、いわば損切り=損失確定の判断
  • 喉の渇き感とエネルギー収支: 動力源Input、パフォーマンスOutput、それぞれの感覚
といった各種視点での「仮説」だ。

これは24時間徹夜の真っ最中、午前3時とかのレース中だ。そんな状況できるのは、ふだんの練習の中からそうしているからだろう。

<言語化>
僕は、こんな「言語化能力」が、長距離レースに必要な「精神力」の正体であると思う。

「精神力」とは、小谷さんの別投稿での定義では「心のマネジメント」。心とは(概ね)脳であり、脳は(概ね)言語によりマネジメントされるから。

辛抱我慢の「ド根性」は、たしかに有効ば場面はあるけれど、それは映画「ワイルド・スピード」のゼロヨンレースで魔改造したブースタースイッチのようなもの。押したくなった時に押してしまったら負け。その前に、できることはいろいろある

旧ブログに書いた、
" 自分なりの高効率動作を、日常的に、言語表現しておく。そしてレース終盤のキツさの中で、「このように身体を動かし続ける」と言語化したことを、確信をもって、脳内リピートする。"
(「動作の言語化」が長距離レース終盤を救う 2018.8.25)
とも通じる話だ。 


2018/11/11

地味に熱い! 神宮外苑24時間チャレンジ2018観戦記

11/28セミナー「糖質制限×脂肪燃焼」で長距離レースを戦うということ→ https://peatix.com/event/526106/ の小谷修平講師を応援すべく、かつ彼のメッソドの成果を確かめるべく、「神宮外苑24時間チャレンジ・ウルトラマラソン」11月11日11時のゴールちょっと前を観戦。

10日11時にスタートし、絵画館を囲む1,325mの楕円的な周回路をぐるぐるぐるぐるグルコサミン。優勝者で200周以上。日の入り16:38、日の出6:12。前後30分くらいは日光もあるけど、12時間以上の夜を走り通す。夜が明けて5時間走り続けてゴールだ。

走破距離は、東京駅前から東名高速で愛知県境くらいいく。1日でね!

痛そう、苦しそうなランナーは例外で、基本みんな淡々と走っている。トータルタイムが速い人ほど、終了直前でもすごいペースアップをするわけでもなく、軽いジョグをしているようでもある。さすがに顔の疲労感やウェアに浮き出た汗の結晶は、軽くないけど。
(着いたの終了直前なので写真とる暇なし! 誰かの撮った こちら とかご覧ください)



運営がおもしろくて、選手のサポートは登録された「ハンドラー」1名のみ、交代不可。1週7分とかで周り続けるので、補給食用意したり、タイム確認したり、忙しい。エイドも24時間営業だ。

上の 公式マップ 7番の下あたりがこの大会専用の基地となり、エイドの公式テント、ハンドラーや応援の私設テントなどがこじんまりと固まる。
コース沿いのエイドでは、ハンドラーが選手に渡すためのコップが置いてある。ひと目でわかるように、みんな変なコップを選んでいて変だ笑。

11時になると笛?が鳴り、選手が一斉に立ち止まって計測開始。タイミング・チップで周回カウントまでは自動計測されていて、最後の1周だけ手計測だ。選手は自分の番号の札を置き、スタッフがチョークを引いて回る。あとで、そのチョーク位置の距離と札を記録する。動画とってみた↓
小谷講師はベスト記録(256.8km)に迫るセカンドベストの255kmと279m、大満足とのこと。レース中は毎時30gの糖質を液体だけでとり、おかげで胃腸系のトラブルも無縁だったと。

糖質制限はガチで、ゴール後くばられたカレー食べながら、「米なんてずいぶん食べてなかったなあ」と。即食べない生活に戻るそうです。


来年のアメリカの「6日間走」=1周333mの室内トラックを延々走り続ける=が大目標としてあり、良い途中経過ともなったようだ。

優勝の高橋伸幸さんは268km! 総合ポイントで決まる世界選手権派遣ほぼ決定だそう。


そして2位の井上真悟さん、、、はたまたま目を閉じてだけで生きてます。ゴール後は皆さん概ね元気で楽しそう。トライアスロンよりも人数が少ないし、全員友達て感じになるんだろう。


ハセツネや列島横断のように、夜通し走るレースはランニング系わりとある。こちらにはトレイル系のコースバリエーションが無いけど、単調な環境の中で、シンプルな動作を極める競技なんだろう。

今日は、トライアスロンは宮崎のエイジ日本選手権、自転車はツール・ド・おきなわ、と市民レーサーたちの日本一決定戦が重なる1日。こちらは近場で淡々小規模なんだけど、地味に熱い大会だった!


2018/11/04

大迫傑の腕振りの進化と、典型的日本ランナーとの差 - ランニング動作論3


重たいものが動いた時、そこには力が発生している。

「腕振り」についてあてはめると、腕だけではせいぜい3kg(62kgの私のTANITA計測)。しかし、腕により駆動される胸郭全体まで含めれば10kgとかになる。両側あわせた回転運動としてみれば20kgとかになるだろう。

つまり、腕振りで最も意識するべきは腕ではない。胸郭の横回転だ。
胸郭の動作により運動エネルギーが生まれる。そのコントロールのために腕を動かす。

これ、たしか僕のトライアスロン(とラン)1年目の2010年のレース終盤、脚が止まりそうになった時に降りてきた感覚がもとになっていると思う。おかげで、明らかに練習の蓄積のないランを武器にできたかな? まあその成績レベルでは、という程度だけど。またこの視点で、トライアスロンでラン世界トップレベルのジョーゲンセン選手や上田藍選手の動きも納得できた。

では、人類最速、陸上エリートランナーではどうか?
その好例な動画がTwitterで流れてきた。大迫傑選手の学生時代からの、腕振りの差だ。


上は今の走り。
アフリカ系ランナーみたいに走っている。

路面はクロスカントリーで、NIKEヴェイパーフライの反発力は削がれているだろう。(NIKE契約の世界のトップランナーはみな不整地で多くの練習をしている気がする)

学生時代


下は学生時代のトラック。
小指の後ろで着地するフォアフット走なのは,
当時から変わらない。






2018/11/03

重たいものが動いた時、そこに力が生まれている - ランニング動作論2

10/26夜, ウェルビーイング・ラボ by MAKES ランニング講座を開催。このプロジェクトは100年人生を幸せに生きるヒントを提供してゆくのだけど、1つの軸で、市民アスリートの支援もしていきたいなと企画してみた。

前回ブログ「スポーツ動作を説明するということ」では、
"「質の高い練習」とは、まずは「質の高い動作を導く練習」である "
とさらっと書いた。質問とかいただいていないから、みんなよくわかったのかな?
「じゃ、質の高い動作って何ですか?」
と僕が訊いたら、どう答えますか?

そんな会話をしてみたいな、と企画した講座。というか、ふだん書いてる話ってどれくらい伝わってるのかな? と確かめてみたい気持ちもあって。(実際伝わっていないこと多かった、、)
「なにそれ? そんな話今聞いた!」という方、まずはフェイスブック https://www.facebook.com/wellbeing.labo いいね!」かフォロー」ください。いいね!の方が強度が強く、更新情報が表示されやすいようです。(Facebookは書いても表示されない投稿が多いから)
質の高い動作、とは、まずは物理法則に沿っていること。

僕の考えでは、ニュートンの運動方程式、「質量×加速度=力」という仕組みに大きなヒントがある。理科のテストではこの式に数字を入れて計算したけど、アスリートに必要なのは「起きている事実」として理解すること。つまり、
重たいものが動いた時、そこには力が発生している。
重たいもの、とはランニングとバイクなら、まず思い浮かぶのは脚。タニタ体組成計によると体重62kgの僕は片脚11-12kgらしい。(どこで切断するんだ?)

ということは、ランニングなら、ヒザを前に振り出して、振り子のように重力に任せて接地すれば、脚だけで10kg米袋、もしくは、2Lペッドボトル6本入りの箱をヒザの高さからドスンと落としたときのパワーが発生しているわけだ。体重40kg台とかの軽量女性でも大差はなく、せいぜい1本2本のペッドボトルを抜いたくらいで、その重量感は変わらない。

バイクのペダリングとは、そのペットボトル入りダンボールを、時計11時あたりから前に投げ下ろすパワーだ。この重力感を無視した筋稼働は無理。

それ以上に重たいのは体幹。どこで切り取るかにもよるけど、骨盤まわりだけで15kgとか20kgとかになるのではないだろうか。実際には身体の各パーツは連動するから数字に意味はなくて、要するに、とても重たいのが体幹。スイムはこの使い方で大きな差が出る。

だから体幹から順に考える。
いいかえれば、重たいものから順に考える。

よくある誤解は逆だ。
手足の末端の動きをマネしてしまう。
いいかえれば、軽いものから順に考えてしまう。

それは無理だよね。よくある「フォアフット論争」の無意味さも結局はここに尽きる。もちろん、マラソン2時間6分の選手が5分、4分、と目指すならまた別の意味もあるけど、あなたはそうですか?

以前からブログで書いてきたランニング技術についてのいろいろな考えも、軸はこういうことだ。フェイスブックで紹介した猫の大ジャンプ動画も仕組みは同じ。これをランニングの腕振りに応用した話はいずれ書こう。
しつこく書いておくと、早くしっかり書いて欲しい方はフェイスブック https://www.facebook.com/wellbeing.labo 「いいね!」フォロー」を。たくさんあれば早くしっかり書いて、ライブもまたやります!
なお自然界の法則によれば、生き物は年をとる。先日ハロウィンで逆らって13年前に(ネット内で)戻ってみたのだけれど、結論として、生き物は年をとるということがよくわかった笑
だったら加齢した生き物なりにパフォーマンス出していこう、という話は、改めて。