2019/05/05

「ブログ副業で年収2000万」の真実 - もしくはネット発信の本当の効果

昨今の副業/複業ブームの中で、「ブログ書いて稼げ」的なのがある。

著名なイケハヤ師  (Twitterフォロワー20万)とか、ブログ起点で華々しく稼がれる方々が目立つ。マイルドなところでも、例えば最近パラ読みした 『複業の教科書』2018/12 by 西村創一朗 もブログ書いて稼ごう!と勧めてた。

しかし、本当に稼ぐためには明確な条件がある。(僕の知りうる範囲でいえば)
この投稿では、よく知らない方に向け、基本的な状況を説明しよう。

稼ぐ条件

結論として、ブログで稼げる場合とは
  • 広告マーケット自体が大きい
  • ゆえに、ネット広告の単価も高い
  • そうではないマイナー分野なら、利益率の高い商品を売れる
くらいだと思う。

たとえば、「31歳短大卒で年収1000万円プラス副業収入2000万円」という https://twitter.com/moto_recruit(Twitter5万)さんインタビュー記事がある。
"「副業で年2000万円稼ぐ男」に学ぶキャリア戦略 評価を高めるには「個人で稼ぐ力」が重要だ" 東洋経済オンライン by 川畑翔太郎, 2019/02/21 
普通の読者は、「2000万もどうやって稼げるの?」という具体的なマネタイズ手法が気になるのではないかな。でも記事ではそこには触れていない。前述の西村さんの本でも触れていない。ブログ発信に限らず、有名な藤原和博さんの「3つ掛け合わせて100万に1人」のキャリア理論でも(普通のサラリーマンに活かせる現実的な形では)触れられていない。

なぜマネタイズ手法に触れないのか?

たぶん、具体的な手法を言っちゃうと、読者さんの多くががっかりして、本が売れなくなるからかな?と思っている。かわりに僕が知るうる範囲で説明しよう。

副業2000万のmoto氏の場合、「ハイスペ層の転職」というメジャー市場を抑えているからだろう。
仮に(※以下この場で思いついたテキトーな数字です)転職斡旋業者が年収1000万転職を決めれば3割=300万円が入る。年7人で2000万いく。これがベースになる。たとえばブログ記事から問い合わせをした求職者の1%で転職が決まるとすると、年700人が問い合わせすれば2000万いく。このうち、広告費=ブログ運営者の収入は一部ではあるけど、業者からすれば、少なくない金額を払う価値がある。
ここに入る数字は単なる例え話で、要は、おカネが動く分野だということ。

このように、高い広告単価を取れる商品は他にもある。「クレジットカードの比較」とかもそうだ。当然に激戦なので、そこで1つ抜けるのには、基本は企業レベルの経営が必要。
僕が会って話を聞いた範囲では、たとえばかの「与沢翼」と同時期に同様の手法で同レベルに(=月で数千万円とか)稼いでた方とか。彼は与沢氏のようなメディア露出ではなく、社員を採用し企業化し、法人営業して、年商数十億円くらいで成長中)
与沢氏は著名編集者と組んで一般知名度を上げる方向に走ったけど、それはある面では「終わった後のメディア向けの顔」かなとも思っていて、少なくともそのビジネスの真実ではない。「大衆にも理解できる表の悪人顔」と「見せないところでの稼ぎ方=たとえば資産運用」をうまく使い分ける方だと思う。この使い分けができないインフルエンサーさんは疲弊しがちな印象もある。

実際、稼げてるケース

moto氏の場合、転職、という市場との相性がいい。「自らキャリアアップしている個人の発信」が信用される、という特性が強いからだ。(この点で「元リクルート」という経歴もわかりやすく、そのまんまアカウント名にするあたり、自身よくわかっていらっしゃる)

マイナー分野=たとえばスポーツ(笑)の場合、単価を確保する工夫が必要。
たとえばAmazonアフィリエイトでは、本では1冊1000円ちょい×2−3%、1冊売って30円とか。でもウェア類やプロテイン類は数千円×8%で1つ数百円以上、定期購入させればユーザ一人あたり年間数千円以上が稼げる。
成功例の1つが、圧倒的な自転車器材レビュー量を誇る It技術者ロードバイク日記 。自己投資額も明らかに多いが、分野トップを取ることで、比較的高単価商品の8%アフィリを多数獲得できていると思われ、オリジナル受託案件も多そうだ
さらに利益率を上げる方法が、独自商品の開発だ。
というと大変なようだけど、「普通の人が大変だと思う」からライバルが少なく、儲かるわけだ。

実際、独自商品はSNSと極めて親和的で、強いファン=固定客に対して、「なぜこの商品が必要なのか?」という必然性を高い説得力で伝えることができる(←ここ超大事)。だから売れる。しかも定期購入=サブスクライブしてくれやすい。
そのために必要なフォロワー規模は、世間で言われているより、ずっと少なくて済む、というのがいまのところの僕の観察。

秋田の水田」 撮影&使用許諾 by稲垣純也 https://twitter.com/inagakijunya

〜収穫は、今、ではない


情報発信とは、稼ぐためではない(まずは)

このように勝ちパターンを紹介された時に、
「ああ、それね、私が本業で扱ってるあの商品なら幾つ売ればいいよね!」
「いつもAmazonで月いくつ売ってるサプリ、どうすれば自前のを開発できるかな?」
くらい現実的に考えることができるのなら、あなたはチャレンジする価値があるだろう。

けど、「なんか稼げるのかな?」くらいでフワっとやると、期待を裏切られるだろう。「苦労対効果」(先の山川和風さんの表現)が見合わないから。

そうではない場合、ネット発信の本当の効果は、「今、稼ぐこと」ではない。
  • 本業ではできない経験ができる
  • 考えが磨かれる
  • 伝えるべきものを広く伝えることができる
といった形のないものを得ることだ。

目的が稼ぐことなら、今ならまず『「いつでも転職できる」を武器にする 市場価値に左右されない「自分軸」の作り方 』 – 2019/4 by 松本利明 あたりで、生涯給与収入を最大化しにいくのが最も現実的かなと思う。noteで序文公開されてます→ https://note.mu/kore_career/n/n1f0f9ad9dc6b )

メディアでウケる論客さん(ホリエモン・西野・藤原さんなどなど)は、スター性に依存し、生存者バイアスもあって、読んでて楽しいけど、実際使えないノウハウが多い。普通の人にも再現性がある手法がまず必要だから。

2019/05/04

インスタ活用の技術:なぜキプチョゲよりキリアン・ジョルネのフォロワー数が多いのか? - ネット発信論5.

SNSユーザ数をスポーツ視点でみると、
  • 月間ユーザー数:facebook 22億 Intsagram 10億
  • スポーツファンのアカウント数:facebook 6.5億 Intsagram 1.6億
出典:「Twitter社とFacebook社が描くアスリート × SNSの近未来予想図」by 五勝出拳一 2018/07/20
との昨夏の数字があり、スポーツファンの率はフェイスブックが高い。

ただ、トップアスリートからの発信なら、インスタグラムが明白に優位だろう。
【スポーツとは、ビジュアルの世界】(上記記事)であり、トップアスリートは最高のインスタ映え素材だから。

たとえば人類最高の長距離ランナー、エリウド・キプチョゲでは
内容はほぼ同じ、投稿数はツイッターが4倍多いので、投稿数あたりではインスタのパフォーマンスは約16倍。ファンが単純に媒体の好みで選んだ結果がこうだ。

もっとフォロワー数を多いのがトレイル・ランニング界の神、キリアン・ジョルネ。


キリアンは、トレランの神とはいえ競技人口はとても少ないし、登山やランニングの一部には知られるとしても、一般人レベルなら知名度ほぼゼロといっていいのではないだろうか? 僕は普通の人よりはこの界隈に近いと思うのだけど、それでも彼の名を知ったのはせいぜいこの1年くらいのことだ。
一方でキプチョゲは、何度も世界的なトップニュースになっていて、知名度最高レベル。(まあ「また凄いケニア人が出てきたみたい」くらいの一般人さんの方が多いだろうけど笑、巨大な世界のランニング人口だけでもファン多いはず)

なぜキリアンのフォロワー数は多いのか?

逆に言えば、なぜキプチョゲは、その実力&知名度に見合うフォロワー獲得ができていないのか?
(という問いは論理的には成立するとしても45万いるんだからイジワルなツッコミなのだが笑、知名度的にはケタが1つ以上たりないともいえるわけで) 

まず、歴史と算数で考えると、SNSファン作りの歴史が違う。
Twitterというサービスは2006.03創設。キリアンのアカウント開設は2009.09と早い。キプチョゲは2014.04。投稿数では14倍の差があり、キリアンの継続ぶりがよくわかる。

Instagramは2010.10創設、キリアンはいつから?とページダウンボタンを押し続けて発見、2011.11に最初の投稿をしている。こちらがその最初の7枚。普通に普通だ笑

キプチョゲは2016.08から。Breaking2が2017.05なので、たぶんその本格化の頃。NIKEさんのマーケティングの意向もありそう。

つまり、キリアンは
  1. Twitter開始が早く
  2. 投稿を続けて、(小さなはずの市場で)コアなファンを育て
  3. Instagram登場後の対応も素早く
  4. Twitter上のファンを持って行けて
  5. Instagram特有のファンを増やしていった
と考えられるだろう。行動の継続が数字に表れている。

さらに内容面まで見ていこう。表現=国語&図工の応用問題だ。

キリアンのインスタ投稿の特徴)
  1. 彼だけが目にしていて、
  2. 普通の人なら生涯一度も行かないようなエキストリームな風景は、
  3. 「このインスタでしか見られない画像」であり、
  4. かつ、彼の「結果に至る過程」が見える
つまり、登録するべき必然性が大きい。初期は普通でも、だんだんとクオリティを上げている。さっき紹介した動画はその典型。普通の人なら生きて還れない級のエキストリームさ加減だ。

一方でキプチョゲは、スタジアムや記者発表など公的な場の報告が多い。伝統的大企業の広報内容に近いかな? まあNIKEという巨大企業の第二広報部的な存在なので(VaporFlyもBreaking2も彼のために用意されたようなものだし)この点で驚きはないといえばないか。

動機の違いも大きい。キプチョゲは、自分から言わなくても、メディアがいくらでも報じてくれる。キリアンは自分から発信しなければ、狭い世界を超えることができない立場だ。

結局キリアンは、自らリアルに体験してきたエキストリームな現場を「素直に」伝える行動を継続している。その蓄積が、Instagramという相性の良い媒体の登場によって加速された、といえるだろう。

・・・

とか説明してみたところで、キリアンのエキストリームな山岳写真ぶりは、あらゆるロジックをふっとばす破壊力ある笑

僕のSNSは、


最近はどっちかといえばTwitter重視な感じです。インスタは気まぐれ。
内容はそれぞれ別なので、関心ある方は両方をフォローください。

<参考記事>
「全てのアスリートはインスタグラムをやるべきだと思う理由」 えとみほ(江藤美帆) 2018/02/15
昨夏の。「アスリートとインスタグラムはめちゃくちゃ相性がいい」という理由を、
理由1:炎上しづらい(適度にクローズド)
理由2:ファンが勝手に親近感を持ってくれる
理由3:フォロワーは持ち運び可能な個人の資産になる
と説明する。1−2は、下記の「一方通行」の話と通じる。インスタが一番一方通行的だから、3はインスタに限らない、 ネット発信すべてに共通する話だ。
<シリーズ投稿>
ネット発信論1. アスリートの情報発信を後押しする「人間関係」について
ネット発信論2. SNS発信は "一方通行" でいい
ネット発信論3. ブレーキ要素を「認知的不協和」理論で解剖する 
ネット発信論4. 「成長の過程」を共有する

2019/05/03

ネット発信論4. 「成長の過程」を共有する

この投稿では、エリート・アスリートにとって、
  • 「セカンドキャリアに備える」
  • 「ファーストキャリア=競技活動で、退路を断つ覚悟を決める」(=くらいのモチベーションで取り組む)
この2つを両立させるための、「ファンと同じストーリーを共有する」というネット活用法について書く。

僕自身はエリート競技経験はないけど、エイジ部門(=マスターズ)での実体験に共通部はあり、今ちょうど大学の講義でも関わってるので、考えを整理しておきたい。

「一方通行のネット発信論」追記

前提として、全てのアスリートは、ネット発信すると良いと思う。その際に、
  1. SNSを「友達の延長」として扱わない
  2. かわりに、一方通告のメディアと割り切る
  3. ファンとの距離を取る(トップアスリートほど、女性は特に)
  4. 発信内容は「素直」に
くらいのスタンスでいると楽かもよ、と先日
ネット発信論2. SNS発信は "一方通行" でいい 2019/04/21
で書いた。

双方向性がウリのSNSをあえて「一方通行」にするのは、トップレベルほど「余計なメンタル要素」を排除するといいから。
もう1つ、特に大学生〜若手社会人ごろまで、SNSを友達どうしクローズドに使うことが多い実態にも合うと思う。

友達間なら、内輪でウケればいい。でもアスリートのような一芸ある立場からは、その延長で発信しないほうがいい。(慣れるに従い混ぜていくのならもちろん良い進化)
この切り替えができないと、極端なケースでは、アホなバイト炎上投稿のようなことも起きかねない。

だから、一方通行、くらいに捉えて、たとえばフォローバックしなくてもいいし(したければしてもいいし)、コメント返したり、いいね!つける必要もない。(僕は好きだからしてるけど)

この点で、SNSとは「自分株式会社広報部」の業務に近い。20代後半くらいの社会人になれば、このビジネス的価値観にみんな適応できているので、スムーズかと思う。(20代前半だとエリートサラリーマンでもアホなこと平然としでかしたニュースとか見る)
その広報活動に対しての反応がダイレクトに得られる、という程度に、SNSは双方向ではある。

「怖がりすぎて結果しか書かないアカウント」問題

逆方向の問題もあり、リスクを恐れ過ぎて、試合結果だけ淡々と報告してるケースも多いのでは?
今の高校とかの教育では、ネットの公開発信は控える方向で指導されることも多いだろう。犯罪被害も現にあるし、それ自体は問題ないと思うけど(アメリカだと違法薬物の売人がメッセンジャーで親しげに接触してくるそうで)、その流れのまま公式アカウントを開設して、情報を出さない過ぎる。

やらないよりは良いのだけど、読者の範囲が、自分の周りのリアル世界から拡がることはないだろう。仮にオリンピックに出ても、ニュースで名前出た瞬間に一時的にだけ増えて、すぐ忘れられてしまうだろう。

「同じ物語を共有する」という発信手法

では何をかわりに見せるかというと、「過程」を見せればいい。

ちょっと高度な事例になるけど、ちょうど良いツイートを紹介しておこう。

10年ほど前、プロボクサーとして日本王者を目指しながらデュアルキャリアでトレーニングスタジオなども経営していたという山川和風さんだ。
「どん底からの逆転ストーリー」をリアルタイムでブログでつづり、完結スレスレまでファンとともに歩んだストーリーがきっかけでコアファンが増え
と、「ファンと同じストーリーを共有する手段」としてネットを使われていたようだ。
彼は双方向に活用されていたようで、中上級者が使いこなすのならもちろん良いことだ。物語の共有、となると、やはり双方向性はいくらか必要になってくる。これは負担というよりも、将来キャリアに向けた大きな大きな武器になるだろう。

「ハッタリ」

「チャンピオンになるための教科書」というブログを書き、自分にプレッシャーを与えて競技成績を急成長させた経緯がある。(黒歴史なので引退時に削除済w)
というあたり、僕も似たような経験をしていて、肌感覚としてもよくわかる話だ。
(旧ブログ→ http://masujiro.cocolog-nifty.com/ 何度か名称変更してるけど、たしか2011−12年頃からか、アラフォーほぼ最強、を名乗っていた時期ありまして、看板に見合う力を、と良いモチベーションになりました。当時いわゆるハンドル名が「ハッタリくん」、レース結果で名前即わかるので事実上の実名アカウント、今は名前=ブログ名です)

「退路を断つ覚悟」について

山川和風さんはもう1つ、興味深い指摘をされる:
実体験を持つ人同士のやりとりには、迫力あるよね。
タイトルの 「退路を断つ覚悟」とは、ここから考えた話です。

命をかけるくらい強い気持ち → 結果

という因果関係は確かにあるけど、神に祈るのと同じ。
ブラックボックスに賭けるなら、博打でしかない。

でもスポーツとは、選択肢を探り、組み合わせ、勝利確率を上げるものだよね。
そんな発想から、本当に強いアスリートは生まれないと思う。

トップレベルほど「余計なメンタル要素」を排除するといい、と先に書いたけど、それは「余計な要素」についての話。セカンドキャリアを考えることは必要要素だし、やり方しだいでは今のファーストキャリア=競技活動にプラスにすることもできるはず。

その1つが、ネットを使ってファンを育ててゆく、ということだ。

ファンと同じストーリーを共有する

「退路を断って競技している」という気分は、テンションを上げるのだろう。
でも「勝ち上がる過程を見せてファンを増やす」ことによっても、自分のメンタルを操作できる。
その過程で、「学ぶ、学びを活かす、発信する」ことが、相乗的に効いてくる。
たとえば大学生なら、これができれば就活は超強いだろう。

アスリートのネット発信では「競技成績」は最強の武器。
結果を出して、ファンを増やす、そこから新たな物語が始まる。
だから、発信するために、勝たねばならない。
実名で、目標を掲げ、発信することこそ、本当に退路を断つ行為だ。

賭けるなら、こちら側のシナリオに対してだと思う。

トレーニングとは、知的作業だ
『覚醒せよ、わが身体。- トライアスリートのエスノグラフィー』p123
今の日本で、スポーツをハイレベルにできるほど健康な心身を持つのならば、経済的なハングリーさは存在しないといってもいい。一方で、出る杭を打て的な社会的、空気的な同調圧力は高めだと思う。どちらが、より高いモチベーションとなるのか?という話だ。

高すぎるプレッシャーとなるのなら、「一方通行」と割り切って、シンプルに過程を発信していけばいい。そのプレッシャーを力に替えられると思うのなら、自らが成長するストーリーを示し、巻き込んでいけばいい。誰かのアラを探して(啓蒙とか誰かのためにする目的ではなくて)見下しディスる炎上芸など一切要らない。