2018/09/16

耐久アスリートの「糖質×脂質」食

先の「大坂なおみのダイエット」の真実 で、ベースとなる事実は断片的なもの。なにしろ10代の女の子向けのファッション媒体teen-VOGUEのインタビューだからね。でも、トライアスロンを中心とした耐久スポーツの栄養理論を踏まえて考えれば、きわめて合理的なストーリーとして理解できる。そんな仮説を書いた。

今回は、その理論的骨組み、耐久スポーツの栄養理論について僕の最新の考えを書こう。

<長距離アスリートの食事法>

その耐久スポーツの方法論:
  1. 日常食: 糖質を抑え脂質は十分に
  2. トレーニング: 前後で糖質を十分にとる
目的:
  1. 日常生活全体を脂質代謝トレーニング化する
  2. 練習の質を上げ、回復も早める
その理由:
  • 長時間練習をしなくとも、長距離レース向けの重要能力を高めることができ(時間制約の大きな市民アスリートには特に重要)
  • その場合に重要度が上がる「短時間高強度トレーニング」では、一定の糖質が必要
  • トレーニング後のリカバリーのために、糖質でインスリンを分泌し、各種栄養素を同化させる
というのが僕の理解です。

この考え方は、6月に来日したデイブ・スコットも説明していた。詳しくはココログで書いたのをご参照→ " 短時間高負荷 × 低糖質 "によるアイアンマン226km攻略法 by Dave Scott」 



<単純な低糖質食のリスク>


注意したいのは、これは単なる低糖質食ではない、ということ。
低糖質食療法の指導、その限界について詳しい鈴木功医師は、低糖質食を長距離スポーツで実行した場合について
  • ある程度は適応するが
  • 出力低下、回復の遅れ、といったデメリットが出てきて
  • 最終的に、成績低下&故障リスク増加するケースが多い
という見解を9/6のFacebook投稿 で示されている。

これらデメリットとは、私思うに、
  1. 糖質の強力パワー使えないから出力低下
  2. インシュリン不足によるり超回復しない
  3. 1+2のW作用により筋力が下がる
  4. 2+3のW作用により故障する
といった流れかなと思う。
前半に書いた方法なら、この問題を回避することができるだろう。

<目的と手法>

大事なことは、自分なりの目的に即して方法論を使い分けること。
いいかえれば、ある特定の手法に依存してはいけない。

手法とは、個々の目的のために、必要に応じて使い分けられるべきものだ。

僕自身はレース中の糖質吸収能力が高いようで、レース中でもトレーニング中でも胃腸トラブルは一度も起きたことがない。たとえば「高負荷練習で吐きそうになった」とかの状態を想像することができない。また目標レースも2時間で終わる51.5kmトライアスロンが多く、脂質代謝がそれほど重要なわけでもなかった。

なので、米とかはトータルでは割と食べていたし。実際、日常のすべてを変えなくとも、部分的に採用するだけでも効果は得られるとも思っている。そもそも僕の競技成績には、プロテニスのような何十億円ものおカネがかかっていないし。

大坂選手の場合、何時間も続く試合中の糖質消費をセーブしたい、試合中の補給による血糖値変動を抑えたい、といった事情もある気がする。これはメンタル的な集中にも影響するだろうし。
確実に言えるのは、体質的に合っていることをトレーニングで確かめているはずだということ。だから、僕の挙げた仮説すべてがあってなくとも、どれかハマるものがあったんだろう。

結論; 糖×脂質の最適配分を探ろう。


2018/09/15

「大坂なおみのダイエット」と糖質制限の真実

もしくは、世界最先端の食事マネジメント術について説明しよう。

大坂なおみ選手、テニス全米オープン2018優勝記念の来日記者会見が、この木曜朝にあった。僕はちょうどアポの時間調整で日本橋あたりのDocomoショップ店内のWifiを使っていて、ちょうど生中継を店内のテレビで見ることができた。

会見中、「ダイエット」という言葉がギャルの減量みたいに受け取られ、笑いが起きていた。しかしDiet=食事、アスリートが使う時は「目的を持った食事のマネジメント」を意味する。日本の大衆文化とグローバルな最先端スポーツとの温度差が、ナオミ選手の微妙な表情から伝わってくるかのようでもあるけど気のせいかも。

その食事の詳細が、"teenVOGUE" ウェブサイト9/11に掲載されている。
Naomi Osaka on Mental Health and Training to Face Her Idol at the U.S. Open
食事面のポイントを抜くと:
  1. オフシーズン: 茹でた鶏肉・野菜中心、糖質は単独では摂らない
  2. 大会前: 炭水化物を摂らない
  3. 大会2週間: 朝食は同じサーモンベーグル
  4. 試合中: 必要量の糖質を補給、バナナも食べる
八田の推測を交えて解説すると:
  1. オフシーズン=減量期: パフォーマンス不要の時期に余分な脂肪をカットしておく。筋トレも積んでゆくと思う。食事内容は、高タンパク×低糖質×低脂質。なおブロッコリーにもそれなりに糖質が含まれていて、完全カットしてるわけでもない
  2. トーナメント前=耐久性能向上期: 体脂肪活用能力を高めるための低糖質食であり、減量目的ではないはず。おそらく高脂肪食。筋トレはせいぜい維持程度かな。
  3. 食事での糖質を(ほどほどに)解禁し、即戦力エネルギーであるグリコーゲンを充填する。ただし20世紀型の「カーボローディング」はしない。また同じ朝食にするのは「ルーティン化」し集中する目的であるのは、食事以外も同様
  4. おそらく試合に限らず、多くのフェーズで、練習中も必要な糖質を控えめに補給しているとも思う(半分に薄めたポカリスエット的なのとか)
このメソッドは、世界の長距離スポーツ界で行われるものと共通するのは、僕がふだんFacebookとブログ(旧ココログ)で言ってきた通りだ。

いわばナオミオオサカはトライアスリートのようにフィジカルを作り上げてきたわけだ。一方でセリーナは筋肉量は十分だが脂肪も載ったシーズン前キャンプ入りした野球選手のような状態であったよう見える。試合開始時点でセリーナとのフィジカル面、すくなくとも耐久性能での勝負はついていた。
「セリーナ、おまえはすでに負けている」
の余裕がメンタル差をうんだ、ともとれるかな。

動画はこちら:

なおこの記事を最初に知った日本のネットメディアでは新女王の食生活は「炭水化物はとらない」なんて書かれている。そんなわけはない笑

すべては目的をもった脂質と糖質のマネジメント。ギャルじゃないんで笑

2018/09/14

サヨナラCocolog、オッケーGoogle

〜もしくは「おはよう、身体。- 八田益之のエスノグラフィー」新設のお知らせ

12年にわたり書いてきたココログ http://masujiro.cocolog-nifty.com/ を退役させた。

過程と効果

2006年ごろ「流行ってるブログというものをやってみよう」と始めたココログ。既に非表示にしたくだらない投稿も幾つか。

でも書き続けてよかったのは、2007夏に買ったクロスバイクからの自転車、2010春からのトライアスロン、と今に至る端緒を〜当時まったくそんな想像すらしていなかったできごとを、記録できたこと。

2年前くらいから本の原稿を書き始めた時、そんなくだらない文章たちに、ずいぶんと助けられた。あなたも本とブログとを突き合わせて読めばおわかりになるだろう。(そんなヒマ人いないとおもうけど笑笑)

震災のショックが落ち着き、2年目のトライアスロンで成績上がっていって、もっと書きたい気持ちが膨らんで、Facebookを友達限定でちょっと書き始めたのが2011夏から。ブログはその間の貴重な記録になっている。Facebookは公開設定に変えたのが2012夏から。読者を増やそうと目標付けをしたのが2013夏からだ。この事情は本で少し触れた通り。

Facebookは「実名の読み手さんの人となりが透けて見える」効果が大きかった。反応もすばやく鋭く返ってくる。これは文章表現や構成の良いトレーニングになり、書き続ける動機にもなった。たまにブログにまとめ、Facebookで紹介してブログを読んでもらい、その反応をFacebookで得て、とパターンができた。Facebookはフロー、ブログはストック、あわせての両輪だ。

2013秋からのKONAレポートでこれがハマって、読者さん急増期に入る。そんな読者さんのおかげで、2017.9.14に登場したあの本も増刷できたのだった。初版が返品されるとは市場価値のないものを作ってしまったということ、出版界における死を意味する。売れたことで僕も堂々と活動し続けることができている。読者さんには感謝感激であります。

サヨナラCocolog

ココログというサービスは、きめ細やかなアクセス管理画面とか、いろいろ好きだったのだけど、せっかくの高機能を収益化するビジネスモデルが不十分だった気もする。Nifty(=日商岩井×富士通)から離れ、今は家電販売店の一部。これ以上投資する気もないのだろうな。

直接のきっかけは、Google大魔神さまの新方針、SSL化(アドレスがhttp:からhttps:に変わる)への対応がいまだに示されていないこと。検索結果などで不利になっている気もしていた。ココログさん日本のインターネット文化を開拓してきたのだろうけど。これも12年という時間だな。

オッケーGoogle

Google-Blogger使うのは、もうこの会社に振り回されないための保険というか必要経費(というか必要悪というかミカジメryo…)であろうと。デザインとか操作性とか人間的感性に劣るかなという気もして、たとえば「Twitterにリンクしても画像が出てこない」という問題 があった(解決済)りだけど、全体では最先端技術の安定性はあって、書いてる途中でフリーズして消えちゃった(ココログでたまにあった)とか無さそうな気もする。




ココログは途中、役割が何度も変わってきたから、ブログ名も何度か変えてきた。ブログ主もハッタリ君てキャラからリアル人間に変わってた。

新タイトルは、「おはよう、身体。- 八田益之のエスノグラフィー」。
あの本の主著者にとって、これしかないでしょう?