2019/02/24

トレーニング科学の意味  ー乳酸研究会2

1年前の今ごろ、中日新聞朝刊3面「この人」に掲載いただいたのでした。5日後には東京新聞にも同内容で。Wikipediaによれば合計302万部。普通の中日読者さんはこんなの読んでないだけで笑

記事で「〜自分なりの世界観を見つけて生きる助けになれば」と纏めていただいたのは、市民スポーツの1つの核心でもあると思う。

なぜなら、情報と刺激が過多な世の中で、身体の存在、という事実だけはシンプルだからだ。そしてスポーツの過程に正解はなくて複雑そのものだけど、ゴールで、自分の身体が今ここにあるという事実は、何にも揺るがされることのないただ1つの正解であるからだ。

< トレーニング情報の選び方 >

いっぱいあるトレーニング方法とかの選び方もそう。
結局やってみて、自分の身体に効いている感触があるなら、それが正解ということ。

とはいえ、身体は1つ、時間は有限。実行してみる前に出来る限り理解して、自分に合いそうなものを絞っておくのは大事。

その際、トップアスリートの経験則が参考にされやすいのだけど、それぞれの「背景・課題・意図」は当然に違う。みんなそれはわかっていて、それでも参考にされるのは、「物語」をイメージしやすいからだろう。競技実績で実証された人物の体験をモデルに、自分自身を物語の主人公として、ハッピーエンディングをより強く信じられるから。

一方で、科学とは、個人の物語を消去して(※エスノグラフィーなど除く)、一般化・抽象化する。これにより汎用性を得る一方で、個人的なイメージ力はどうしても落ちる。

そこで「誰もが知っている有名選手についての理論解説」がなされると、この課題はクリアできる。前回ブログで紹介した東大・近藤秀一選手のPolarizedトレーニングについての発表は好例。

< 近藤選手の「背景・課題・意図」 >

乳酸研究会の全体は、八木慶太さん記 「第15回 乳酸研究会@東大 メモ」 にまとめらてるのでどうぞ。発表者の竹井尚也先生に、後にTwitterで八木さんとタッグ組んで質問したら、

❝ 夏合宿やマラソン前は長い距離の走り込みも多少ありますが、それでも中強度:高強度=1:1くらいです。鍛錬期はしっかりPOL(Polarized)をやってLTやOBLAを向上させます。レースに近づいたらレースペースの練習も多くなります。❞
など丁寧に解説いただき、「背景・課題・意図」まで具体的に知ることができた。

< 乳酸利用に期待しすぎない >

もう1つ質問できたのは、前回書いた乳酸研究会での榎木先生の「乳酸利用」について。それはあくまでも1つの視点であって、全体的には、以下のように理解するのがわかりやすいだろう。

LT=要するに基本走力を上げろ、というシンプルな話ともえいるけど、体内の物語をより精緻に、豊かに、理解できるのは楽しい。
(なお最近TwitterにはFbとかに無い良情報多いのに気付いて多用しています、掃き溜めアカウントも多いところだけど避ければ問題ないから。Facebookとはほぼ書き分けていて、このブログで集約できればいいかなと。Fbだけ読まれてる方はよろしければTwもフォローを〜逆も)

< 長距離競技での筋損傷 >

「長距離走中に発生する筋痛・筋損傷・酸化ストレスと運動パフォーマンス」との筑波・大森先生の発表で触れられていた要素も頭に留めておきたい。

たとえばトライアスロンのバイクパートで脚が終わる、ラン後半全然走れない、等のケースは、筋グリコーゲン枯渇に加えて、筋損傷ケースもあり、どちらが自分のボトルネックなのか意識することは大事。
トレイルランニングでも、ハセツネ優勝ほかで知られる神奈川の三浦裕一さんもスピード練を始めて結果を出してるようで、高強度にはレースでの筋損傷軽減効果もありそうだ。

< トレーニング科学の意味 >

このように、運動中の体内の変化を想像でき、「体内で起きていることの物語」が見えてくると、トレーニング中も、その中長期の過程全体も、知的に楽しくなるもの。

といって僕自身はかれこれ2-3年間マトモにレースしていないし、本当に盛り上がっていたのは本に書いた2010年からの3年ほどのことなんだけど、、それでも、かつて自分の身に起きたことを振り返るだけでも十分に個人的に楽しいし、そんな僕なりの考え方がわかりやすい、と読んでくれる方もまあいらっしゃるようで、書き続けていきます。

まあいずれまた自分の身体をレーシングマシン化したくなるとは思うけど笑

乳酸研究会に出て、ライブで感じてから、SNSで文字をやりとりすることで理解が深まった面は確実にあり、やはりライブて良いなとも思う。レースは究極のライブだけど、演劇もライブ。で行ってきたのが:
舞台「虎は狐と井の中に(仮)」2/19昼、ネットニュースとかでともすれば見下しながら消費してそうな社会の底辺を重く描く。
トライアスロン日本選手権も出た慶應出身イケメン俳優米田敬さん企画講演。さとうほなみ=ほないこか(ゲスの極み乙女Dr.)さんが生命力溢れキラッキラしてる。これを間近で見れるのが小劇場!

ところでこちら、
スポーツでも多い「脳内でうまれるニセの痛み」について、
痛み専門医、河合隆志先生による徹底解説を書いてます。

インタビュー&執筆は私。
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